「ただいま!」

家路を急ぐぼくの前には中学生とおぼしき女の子が歩いていて、ぼくよりも一足先に家に着いた。玄関のドアを開けて彼女は叫ぶ。「ただいま!」。中からお母さんらしい声がする。「お帰りなさい」。ぼくはその声の横を通り過ぎる。

思い返せば、小さなころからほとんど「ただいま」を言ったことがない。はにかみながら小さな声で言ったことならあったかもしれない。ぼくは人前で大きな声を出すのが好きではない。恥ずかしくてしかたないのだ。今でも人前で話すのは苦手だ。祖母はにこりと笑いながら、なにも言わないぼくを出迎えてくれた。「お帰り」。

ただいまと言う人がいること、ただいまを聞いてくれる人がいること、帰る家があること。行ってきますと言う人がいること、行ってきますを聞いてくれる人がいること、出かける家があること――幸せなことなのだろうと思う。玄関に着いたら、小さな声でもいいから、「ただいま」を言うようにしよう、と思った。

by enzian | 2009-01-23 23:21 | ※通勤途中 | Trackback | Comments(22)

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Commented by non at 2009-01-24 00:30 x
私は 「ただいま」は得意ですが(笑)
「いってらっしゃい」や「ぉ帰りなさい」の方が苦手です~

今では 送り出し 迎える側がほとんどで
自分が「ただいま」という機会は少ないです。
でも 夫は 挨拶大好き人間なので これからは ちゃんと応答してあげよう~と思います(^▽^)V 面倒くさがりの主婦より~
Commented by aroomwithaview at 2009-01-24 04:17
我が家は子供がいるせいもあるんですが、かなり派手に
夫を送り出します。お隣さんが真似して笑うくらいです。
わたしのどこかに、今日が最後の日だったらなんていう
変な気持ちがあるから、送り出すときは結構真剣です!
夫が帰り、娘達が猿みたいに夫によじ登って、
お帰りなさいと言う光景は微笑ましいです。
そろそろお年頃だから、もうじき懐かしい光景になって
しまうのだろうけれど、自分は父をそんなふうに
迎えたことはないですね。

こちらは送り出すのも迎えるのもハグやらキスやら・・・と
まさに昔映画で観たとおりのご挨拶が普通です。
習慣だから特に深い意味もないのだろうけれど
習慣も練習と一緒でどんどん上手になって、心もこもれば
しめたものだろうなって思います。まだまだビギナーです。

>玄関に着いたら、小さな声でもいいから、「ただいま」を言うようにしよう、と思った。

ひとり暮らしをしていたとき、返って来る声はないのに
「ただいま」って言っていました。その後の静けさがさらに
淋しさを増すんです。そんなこと思い出しちゃいました。
長くなりました~
Commented by enzian at 2009-01-24 11:27
aroomwithaviewさん

>我が家は子供がいるせいもあるんですが、かなり派手に
夫を送り出します。お隣さんが真似して笑うくらいです。‥‥
夫が帰り、娘達が猿みたいに夫によじ登って、
お帰りなさいと言う光景は微笑ましいです。

うんうん、そういう雰囲気は、
その様子を見たことはなくても、
aroomwithaviewさんのブログから滲み出ていますよ。^^

>わたしのどこかに、今日が最後の日だったらなんていう
変な気持ちがあるから、送り出すときは結構真剣です!

いえいえ変な気持ちではないと思います。
考えれば、誰しもそういう可能性はあるのですから。
テレビ番組で、漁師の夫を送り出すときは
かならず港で、見えなくなるまで見送る、
という女性の姿が放送されていました。
その女性は、なにもしゃべらずたんたんと見送っていましたが、
思いはaroomwithaviewさんと同じなのかもしれませんね。
Commented by enzian at 2009-01-24 11:28
aroomwithaviewさん、続き

>そろそろお年頃だから、もうじき懐かしい光景になって
しまうのだろうけれど、自分は父をそんなふうに
迎えたことはないですね。

ご自身もよじ登りたいのでは?^^

>ひとり暮らしをしていたとき、返って来る声はないのに
「ただいま」って言っていました。その後の静けさがさらに
淋しさを増すんです。そんなこと思い出しちゃいました。

話しかけても誰もなにも言ってくれない、
言ってくれる人がいない、
そんな淋しいのはイヤですよね。
Commented by enzian at 2009-01-24 11:29
nonさん

>私は 「ただいま」は得意ですが(笑)
「いってらっしゃい」や「ぉ帰りなさい」の方が苦手です~

むむっ、それはめんどくさいからですか。

>今では 送り出し 迎える側がほとんどで
自分が「ただいま」という機会は少ないです。

ぼくは主にでかける側なので、
送り出し、迎える人の側の気持ちは
あまりわからないのです。どんな気持ちなのでしょうね。
(下でaroomwithaviewさんが書いておられますね。)

>でも 夫は 挨拶大好き人間なので これからは 
ちゃんと応答してあげよう~と思います(^▽^)V 

きっとご主人も喜ばれるかと思います。
(>_<。)
Commented by coeurdefleur at 2009-01-24 20:54
皆が揃う時間が少なくなってくると、挨拶も大事なコミュニケーションのひとつです。
「行って来るね、気をつけて行ってらっしゃい」に、「ママもね、行ってらっしゃい」だとか、
ただいまと玄関の扉を開けると「お帰りなさ~い」と出迎えてくれるのも、とても嬉しい。
毎日繰り返される、自然で当たり前なことだけど、これって幸せなことなんですね。
Commented by enzian at 2009-01-24 22:13
柊さん

>皆が揃う時間が少なくなってくると、挨拶も大事なコミュニケーションのひとつです。

なるほど。
そういう視点でも、ひとつ記事が書けそうですね。
親も子も、みんな忙しくなってますものね。

>毎日繰り返される、自然で当たり前なことだけど、これって幸せなことなんですね。

ええ、とても幸せなことだと思います。
Commented by gauche3 at 2009-01-24 22:41
僕は子供の頃から、家に誰も居ないことが分かっていても、
「ただいま」を言っていたような気がします。
さすがに一人暮らしのときは、言わなかったですが・・(笑)

お祖母さんには、enzianさんの「ただいま」が、きっといつも
聞こえていたんでしょうね。
Commented by enzian at 2009-01-24 23:07
猿夫さん

>僕は子供の頃から、家に誰も居ないことが分かっていても、
「ただいま」を言っていたような気がします。

とても興味深いです。
それは猿夫さんのなかになにか理由があったのでしょうね。
猿夫さんのことですから、興味深いのです。

>お祖母さんには、enzianさんの「ただいま」が、きっといつも
聞こえていたんでしょうね。

そうなのでしょうね。
そして、ぼくのなかでも、
帰り道にはいつも祖母の「お帰り」の声が
聞こえる気がします。
Commented by ao at 2009-01-25 12:50 x
enzianさん お久しぶりです。

気持ちよく「お帰り!」と、言えるように・・・
最近、ちょっと忘れていたかも^^;(強く反省)

そうとう遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします。
Commented by enzian at 2009-01-25 16:35
aoさん

>最近、ちょっと忘れていたかも^^;

(゜□゜)イケマセ~ン!
これを機に徹底をお願いします。

こちらこそ、よろしくお願いしま~す。(^▽^)v
Commented by こんぺいとう at 2009-01-26 10:33 x
このお話は 心にグサリとささりました。

平日 子供たちより帰りの遅い私は 「お帰り」をなかなか言ってあげれないことに
常に 悲しく思っているのです。

朝も 「ママ いってくるね」のメモをおいて 出かける毎日・・・

子供たちにつらい思いをさせているのではないかと
改めて感じました。

Commented at 2009-01-27 00:31
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by まだ at 2009-01-27 08:24 x

気持ちを言葉に出すことが、恥ずかしかった思春期…
小さい頃は、平気で言えたのにって思いました。
心の中の何かがそうさせていたのでしょうね。
ふとしたことで、心が開いたり…閉じたり。
声に出すことも…自然とできるようになるものですね。

わたしは、一番身近にいた両親に『ありがとう』が言えなかった人です。
自分が親になり、数年して … 『ありがとう』 が 言えるようになりました。
心のどこかで、両親に対する何かが解けたんでしょうね。
Commented by enzian at 2009-01-27 21:44
こんぺいとうさん

そうですか。

では、もし平日に送り出すことができて、
迎えられることがあったら、
思いっきり送り出して、
思いっきり迎えてあげてください。

そのとき、いつもゴメンねと言えば、
わかってくれるような気がします。^^v
Commented by enzian at 2009-01-27 21:58
鍵コメさん

鍵コメさんのコメントを読んで、
信じて待つことの大切さを思いました。

多くの場合は言葉で伝えることが優先しますが、
ときには黙って待たねばならないときもあるのでしょう。

ぼくなどは待つのが苦手な方なのですが、
じっと待たねばならないときがあります。

信じて待ってくれる人がいたから、
今の息子さんもあったのでしょう。
待ってもらっているあいだに
コツコツを必要なことを積み上げていたのでしょうね。
Commented by enzian at 2009-01-27 22:04
まださん

まださんは小さいころは言えたのに、
思春期になると言いにくくなったのですね。
微妙なものがそうさせていたのでしょうね。

ぼくの場合は、
物心ついたときからなので、
なかなか言えるようにならないのだ~^^;
Commented by 座敷童 at 2009-01-31 01:55 x
幼き時は一人っ子鍵っ子、仏間住まいだったので、
「ただいま」は甚だしくつぶやきに近かったです。
誰もいないし何もない、空っぽのお家だったのです。
そのかわり「おかえり」はでっかかったです。
何しろ自分以外の家族全員の帰宅を待っているので・・・。
だいぶたって夜遊び(笑)する頃になると、
「ただいま」がでっかくなりました。
懐に帰る事を覚えたのです。

ちなみに童の母はなぜか「ただいまなのねー」という
なぞの日本語を使います。
「お帰りなさいなのねー」って返しますが、なんなんでしょう。
Commented by enzian at 2009-01-31 13:51
座敷童さま

>幼き時は一人っ子鍵っ子、仏間住まいだったので、
「ただいま」は甚だしくつぶやきに近かったです。
誰もいないし何もない、空っぽのお家だったのです。
そのかわり「おかえり」はでっかかったです。
何しろ自分以外の家族全員の帰宅を待っているので・・・。
だいぶたって夜遊び(笑)する頃になると、
「ただいま」がでっかくなりました。
懐に帰る事を覚えたのです。

おもしろく読みました。
これほど表現できるなら、
あなたも自分で文章を書いてみればいいのに。
ブログはやらないの?

>ちなみに童の母はなぜか「ただいまなのねー」という
なぞの日本語を使います。

「ただいま」を言う自分をどこかで
客観的に見ているからでしょう。
Commented by 毒きのこ at 2009-02-10 22:56 x
ちょっと視点がズレるかもしれませんが
実は「挨拶ことばを交わしあうこと(日常の)」について
ここ何年か、考えていました

しつけ・習慣・場の雰囲気・・・
ルール・ジェネレーションギャップ・・・^^;

ほんとっ!!!
多様な価値観が当たり前というか(半分怒り泣き気味!)
むしろ単一っぽいと(道徳心から?)信じていたりすると
生きにくい世の中だと痛感してます

それで最近
言葉で挨拶しあうという一見当たり前なようなことを
一度見直してみようと、そんな2009・・デス
Commented by 毒きのこ at 2009-02-10 22:58 x
(つづきます)

これが結構面白くて、なかなか発見な毎日です♪
無礼者?って
決めつけていた輩が、じつはマメに空気を読んで振舞ってたり
礼儀正しい!って
思っていた人が、じつは本当の意味の挨拶ではなく牽制モード
だったり・・

いままでは若人に目くじら立ててたりして
あたしもだいぶ頭固かったかなぁ~ ><。。  歳???


>なにも言わないぼくを出迎えてくれた。「お帰り」。

素敵なエピソードですね。
うるうる(@@)
気持ありき・・ですよね。

そう思うと、私なぞ、
カタチ優先の見栄っ張りの
中身の伴っていない
「挨拶」しか、まだまだ出来ないのかも・・なんて

とっても考えさせられる記事でしたのでコメントしてみました!
・・・って、だいぶご無沙汰して、ハラハラドキドキさせて、放浪して
ど~も、すみません(^^;)


P.S 怒ってるよね・・・?
Commented by enzian at 2009-02-11 16:17
毒きのこさん

挨拶できない人が多いですね。
ぼくは若いころは「挨拶さえできればいい人なのかよ」
なんて感じでちょっとひねくれていたのですが、
さすがにこのごろでは、
やっぱり挨拶ぐらいできないと恥ずかしいよな‥‥
なんて感じになっています。

>決めつけていた輩が、じつはマメに空気を読んで振舞ってたり
礼儀正しい!って
思っていた人が、じつは本当の意味の挨拶ではなく牽制モード
だったり・・

挨拶できない人が多いですが、
そうした様子を見るとすぐカッカきてしまいますので、
冷静にその理由を分析したことがありません。
そういう分析も必要ですよね。
自分が損をしないためにも‥‥

今年はできるだけにこやかに挨拶するようにしよう、
と秘かに思っています。

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