白い犬

バス停に立っていると、初老の男性に連れられた白い犬が前を横切っていく。鼻先が地面についてしまうのではないかとハラハラするほど犬の首はうなだれていて、いつ倒れるとも知れないような足どりでよたよた歩いている。男性は犬の前をゆっくりと一定のスピードで歩いていて、振り返って犬を見ることはない。いつもの朝の風景なのだが、はっとした。この街(山里)に住みはじめたころ、若い女性がワンワンと騒がしい白い犬に引きずられるように散歩しているのを毎日のように見たが、あの犬がこの犬なのであった。

犬の足取りは見る度におぼつかなくなっていく。ぼくはこれまで動物もまた老いるということを知らなかったかもしれないと気づいた。かつてたった一度だけ飼った犬は、うまくしつけることができなくて鳴き止まない犬となってしまい、知らないうちにどこかに引き取られていった。何度も飼った歴代の猫たちは、自由気ままに生きてぼくを楽しませてくれたが、どれもこれも、いつの間にかいなくなっていた。ぼくは最後まで責任をとったことがない。

by enzian | 2009-06-05 23:01 | ※通勤途中 | Trackback | Comments(0)

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