取り憑かれたように草むしりをする人

最寄りのバス停の標識は、地区の周回道路を挟んで東西、二箇所に立っている。二箇所に止まるバスはそれぞれ系統がちがうが、どちらもたいして変わらない所要時間で最寄りの駅に着くので、その日の気分で使いわけることにしている。東側のバス停のそばにはソメイヨシノがある。ソメイヨシノは季節折々の美しい顔を見せてくれるが、根もとの草むらにはヤブ蚊が多い。西側のバス停は日当たりがよく、夏は日射しが強すぎるぐらいだ。裏手の土地にはイガをたくさんつけた大きなクリの木が植わっている。

東側のバス停では、ソメイヨシノの根元の雑草と格闘している体格のよい女性とよく会う。ソメイヨシノの根元には手入れされることなくだらしなく伸びた芝生が生えている。芝生というのは意外にしっかり根を張る植物で、それなりの量まとめてひっこ抜くには大変な力が必要なのだ。その人は、ぼくがバス停に着くころにはいつもベンチに荷物を置いていて、しゃがみ込んで両手で芝生を抜こうとしている。その力の入り具合には尋常ならざるものがあり、腕と脚を地面と並行に伸ばして力いっぱい雑草を引っ張る頬(ほお)はぷるぷると小刻みに揺れ、紅潮している。ぼくは女性をひそかに「綱引き選手権」と呼んでいる。そうこうするうちにバスが来るが、女性はいっこうに乗る気配がない。ヤブ蚊に刺されないだろうかなどと窓の外を案じつつ、ぼくは駅に向かう。

東側だけだと思っていたら、先日、西側のバス停でも会った。女性は地べたに荷物を置いたまま、焼きつけるような日射しがじりじり照りつけるなか、四つんばいになって、舗道の敷石のあいだから伸びた小さな雑草を慎重に抜いていた。力一辺倒ではない女性の姿であった。それは、高層ビルから地面に降りた一瞬、地面に手足をつけたスパイダーマンの姿のようでもあった。バスが来ても、取り憑かれたように草をむしり続けている。日に焼けないだろうかなどと心配しつつ、エアコンのきいたバスでぼくは涼やかに駅に向かった。

by enzian | 2009-08-20 20:20 | ※通勤途中 | Trackback | Comments(38)

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Commented at 2009-08-20 23:02
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Commented by enzian at 2009-08-21 21:56
鍵コメさん

こんばんは。
探させてしまってすいません。
どうも思い通りに書けなくて、
下の方に隠したのでした。^^;

>第二段落~恐怖映画。

大爆笑。^^
ホラーな世界なんですね。

じつはぼくも草むしりをはじめると止まらないタイプで、
真夏になぞはじめるものなら、
日射病になって倒れるまでやめないものですから、
自重しております。

ひょっとしたら、ぼくは、
人の行き交うなかでも夢中になれる
この女性がうらやましかったのかもしれません。^^;
Commented by non at 2009-08-22 09:20 x
親戚に 草抜きしているのが楽しい~と
いう女性がいました。

そういうタイプの方は
きっと机の上も部屋の中も 整然と片付けられて
あるのだろうなと推測します。

私は 雑草も結構好きで 抜くのも面倒なので
庭は 見知らぬ草が 伸び放題となっており
enzianさんがご覧になると 卒倒されるかもしれません。

これは 本人の自由なのだと思うのですが・・・
世間一般では やはりキチンと整理されている状態
雑草のない状態が 理想であるゆえに
そうでない状態は 怠慢としか見えないのが 哀しいです(笑)

でも 何かを一心不乱にやりとげられる人は
何でも 上手になり成功するのかもしれないな~と
すべてにおいて 中途半端な自分を反省するのですが
たぶん 一生 このままなのでしょう~
Commented by enzian at 2009-08-22 16:53
nonさん

>私は 雑草も結構好きで 抜くのも面倒なので
庭は 見知らぬ草が 伸び放題となっており
enzianさんがご覧になると 卒倒されるかもしれません。

ちなみに私の家の庭は雑草でジャングルのようになっており、
nonさんがご覧になれば、卒倒されるでしょう。^^

それと、記事の女性なのですが、
西側のバス停で草を抜いておられるときには、
ハンドバックやらの荷物を舗道に散乱させたまま
取り憑かれたように草むしりをしていました。
アンバランスがあるのかもしれないな、
と思ったことです。

>これは 本人の自由なのだと思うのですが・・・
世間一般では やはりキチンと整理されている状態
雑草のない状態が 理想であるゆえに

今年まったく草むしりをしていない我が家の庭は
たくさんの昆虫たちには愛されておるようでございます。
秋にはすばらしい鳴き声を聞かせてくれそうです。^^v
Commented by 毒きのこ at 2009-08-24 18:18 x
>やさしいということ

安易に、優しいですね~とかは言われたくないですね

これ見よがしに、優しいだろう?的な態度をされるのも辟易

私の勝手な理想ですが^^;

とってもソフトで、思わずお礼や感謝を述べることも

つい、うっかりしてしまうような

でも嬉しくて、ほっとするような

ふんわりとした、いたわりや気づかいが、いいなぁ~と


PS.晩夏は、疲れが出る時期ですよね~(><)。

Commented by enzian at 2009-08-24 22:08
毒きのこさん

これみよがしな優しさとか、
優しさの押し売りはイヤですよね。
ほっとするような優しさ、いいですね。(´ω`)v
Commented by 座敷童 at 2009-08-28 02:01 x
いや意外と、憎しみかもしれませんよ!
だって根っこから引きはがしているということは、
もう植物そのものの営みを絶やす気満々じゃないですか。
「芝生が憎い、この縦横無尽に絡まった根が、憎い!」
(サスペンス的テーマで)

もしくは、その草が取り除かれることによって、
何か形ある風景を完成させようとされているのかもしれませんね。
Commented by enzian at 2009-08-29 20:12
座敷童さま

>だって根っこから引きはがしているということは、
もう植物そのものの営みを絶やす気満々じゃないですか。

そうですなぁ。
根絶やしという言葉がありますなぁ。
あな恐ろしや。
(なんとかサスペンスの曲がリフレインしとります。)

>もしくは、その草が取り除かれることによって、
何か形ある風景を完成させようとされているのかもしれませんね。

それは建設的な解釈ですね。
今回の記事では解釈を加えなかったのだけど、
いろいろ考えてみてもよかったかな。
Commented by yuta at 2009-09-01 18:18 x
enzianさん,ドングリ仲間の記事を拝見に来ました。
 お茶づけに,どんぐり,の記号的意味と異なる使われ方、おもしろいですね。
>嗚呼、行き詰まりまくり。
私も・・・・・・・です。

個人的には葉っぱを頭に乗せた女性の写真がなにか好きです。こういう風景の(自然の)イタズラって,そこになにか気配があっていいなと,思ってしまいます。
Commented by enzian at 2009-09-01 19:34
yutaさん

yutaさんに返してもらったコメントの
残っていたのがどんぐりであるがゆえに、
心が温かくなる、というの、納得しました。^^

>個人的には葉っぱを頭に乗せた女性の写真がなにか好きです。こういう風景の(自然の)イタズラって,そこになにか気配があっていいなと,思ってしまいます。

ありがとうございます。
気配は雰囲気と言ってもいいのでしょうね。
ぼくもそう思うのですが、
これって改めて説明しようと思うと難しいですね。
(いかん、論文の悪い影響が‥汗)
Commented by しょこ at 2009-09-01 21:58 x
葉っぱが一枚 …いいですねぇ~好きなです。^^
カメラマンの『やさしい』目線、勝手にですが感じますよ。
そして鼻の奥が痛くなって、うるっ、と涙腺が緩んでしまいました。

夏も終わりですね!

Commented by enzian at 2009-09-01 23:16
しょこさん

夏が終わってしまいますね。
新しい季節を迎える前に、ひとしきり、
去る季節を淋しがりましょうか。

>カメラマンの『やさしい』目線、勝手にですが感じますよ。

いえいえ、それは、「勝手に」ということではなく、
「客観的に」言って、やさしいカメラマンなのです。
^▽^)ウケラケラ
Commented by seedsbook at 2009-09-02 14:26 x
おはようございます。

↑記事へ

私の子供の頃は小さい子供達と遊ぶときに、「お豆」と読んでいましたよ。
Commented by enzian at 2009-09-02 22:01
seedsbookさん

こんばんは。

>「お豆」

「ごまめ」と呼ぶ場合があると聞いたことがありますが、
「お豆」の方がやさしい感じがします。^^
Commented at 2009-09-06 22:43
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Commented by enzian at 2009-09-06 23:35
鍵コメさん

でしょ、でしょ!^^
Commented by 座敷童 at 2009-09-07 03:02 x
なんか今年の夏は残暑が短いような、もう秋のような。
お茶漬け、どんぐり、・・・というか、
個人戦になるようなものはあまりしなかったと思います。
けっこう男女混成で遊ぶことが多かったからかもしれないですが。
弱肉強食の世界がそこにはあるのですよ!
勝ちたかったら、下級生の女子と手を組んで
上級生の男子に挑むんです。

リモコン>雪山登山では雪崩に遭遇した時の救助策として
ロープを持っています。たとえ本体が埋まっても
ロープの端っこが雪面上に出ていれば、たぐって発見されるからです。
リモコンに1メートルぐらいのリボンを付けましょう。
Commented by enzian at 2009-09-08 00:08
座敷童さま

今年は秋の訪れが早いですね。
また戻るかもしれないけど。

>けっこう男女混成で遊ぶことが多かったからかもしれないですが。
弱肉強食の世界がそこにはあるのですよ!
勝ちたかったら、下級生の女子と手を組んで
上級生の男子に挑むんです。

世代が違うからかもしれないけど、
男女混成という考えはまったくなかったのです。

>リモコンに1メートルぐらいのリボンを付けましょう。

なるほど、かわいいリボンを付けよう。^^v
Commented by hiruu at 2009-09-11 23:41
やりだしたらやめらんない。こういった人を一極集中型というのかな。最後の1本まで抜いてようやく落ち着くことができる。
哲学者に多いタイプのような気がしますが(^^)

この女性にとって、芝生も雑草も同じ草であることにかわりないのかもしれませんね。
Commented by enzian at 2009-09-12 00:41
ひるさん

やめられないとまらない~♪

>哲学者に多いタイプのような気がしますが(^^)

なにせ、雑想の世界ですから‥‥

>この女性にとって、芝生も雑草も同じ草であることにかわりないのかもしれませんね。

かもしれないですね。
(でも、あれをユリと間違えちゃ、
ユリが怒りますよ。^^v)
Commented at 2009-09-15 23:49
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Commented at 2009-09-16 06:28
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by enzian at 2009-09-16 20:39
鍵コメさん

ステキでしょ。^^

京都はあまり雨がふりません。
例年だともっと雨が降るはずなのですけど。。。
キノコが生えないので、困っておるところです。

ビワ食べ放題になったらいいですね。^^
先日、ミズの実を食べる機会があって、
あまりの美味しさに、ネットで頼んでしまいました。
Commented by enzian at 2009-09-16 20:41
鍵コメ2さん

そうでしたか。よかったです。

二つの目標、なんなのでしょうか。
リンク、ありがとうございます。^^
今後ともよろしくお願いします。
Commented by mintogreen at 2009-09-17 00:16
enzianさん、こんばんは。

「どんぐり」の記事で思い出したこと・・・

私達が子供の頃は、年齢を超えて遊んでいましたから、年下の子たちにはハンデを付けていましたね。
遊びの中にも強い者が弱い者をかばう姿がはっきりありましたね。
あと、同級生と遊ぶ時もグループで鉄棒回り競争する時などは、運動神経がいい人は「貯金」といって、不得意な人の分まで何度もぐるぐる回って、グループを勝利に導いていましたね~。
楽しかった~。

「どんぐり」「お茶漬け」、どちらもかわいい言葉ですね。
子供ながらの助け合いの精神でしょうかね~。

遊びの中から、様々な社会性を学んでいたんでしょうね。
Commented by enzian at 2009-09-17 20:43
mintogreenさん

こんばんは。
mintogreenさんもハンデをつけて
遊んでおられたのですね。

>あと、同級生と遊ぶ時もグループで鉄棒回り競争する時などは、運動神経がいい人は「貯金」といって、不得意な人の分まで何度もぐるぐる回って、グループを勝利に導いていましたね~。

これがおもしろかったです。
「貯金」というのは初めて聞きました。
年齢ごとのハンデではなくて、
運動能力ごとのハンデもあったのですね。

だとすると、
mintogreenさんたちの遊びの方が
高度な社会性があったと言えるのかもしれません。
Commented by kaori_tochiu at 2009-09-26 20:30
こんばんは^^
今日、ミズの実を買いました。100グラムで300円。
高いな~と思ったのですけど、
その近くにあったカオリダケ?(とても大きかった)が1本3000~4000円で、マツタケ(すごく大きかった)が3本13000~18000円。
ミズの実はお手頃ネ~…( ̄∀ ̄;)
と思いつつ岐路についたのでした。ミズの実だってけっこう希少だと思うのですが、上には上がいるものですね。

岩手も雨は少ないのですけど、店頭にはボチボチ出てきています。
今日見たキノコたちも地場産品でした。

最近enzianさんもミズの実を食べたって書いていらしたなぁ、と思いまして。ではでは。
Commented by enzian at 2009-09-26 22:43
かおりさん

こんばんは。
ミズの実、毎日食べてますよ~
それはもう美味しくて、美味しくて。^^v

>カオリダケ?(とても大きかった)が1本3000~4000円

たぶんコウタケ(香茸)だと思います。
なんかウロコのついたようなキノコでしょ?
特に東北の方なんかでは珍重されるキノコなのですが、
ちょっと高いですね。

>岩手も雨は少ないのですけど、店頭にはボチボチ出てきています。今日見たキノコたちも地場産品でした。

東北というのはキノコ好きには憧れの地です。
こちらだと高山でまれにしか会えないようなキノコが
平地にありますから。いいなぁ。。。

ミズの実って、あまり知られていないですけど、
東京や京阪神のスーパーで売り出したら
大ヒット商品になるような気がします。
Commented by kaori_tochiu at 2009-09-26 23:17
コウタケというのですね。ふむふむ。
おそらくそれです。全体にささくれ立って
がさがさしているように見えました。
横に広がってたり縦に伸びていたり
形はいろいろでしたけど
長いところで25cmくらいだったでしょうか。
高いのか~。^^

いつか東北にいらしてくださいね。
キノコが待ってます。
Commented by enzian at 2009-09-26 23:32
かおりさん

コウタケというのは食べるのがちょっと難しいのです。
できれば、いったん干して、
干したものを水で戻してコウタケご飯というのが
とっても美味しいと言われていますよ。
(ぼくも食べたことないけど。^^;)

>長いところで25cmくらいだったでしょうか。

けっこう大きいですね。
でも昔はもっと大きいのがあって、
自動車のハンドルぐらいのがあった、
とこれも人の話で聞きました。^^
(ハッ!キノコの話をすると止まらなくなる‥‥)

>いつか東北にいらしてくださいね。
キノコが待ってます。

ぼくを待っているキノコがいるのか‥‥
(妄想中。^^)
Commented at 2009-10-06 21:04
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by enzian at 2009-10-06 22:21
鍵コメさん

こんばんは。

そうですね、遠くに行くのは、
遠くに行きながらも、じつは自分に近づいて行こうと
しているのかもしれませんね。

旅のわくわくはよいものですが、ぼくも、
どきどきやら、寂しさもとても重要な要素だと思います。
寂しさをとってしまうと、旅じゃなくて、
旅行になるような。^^

下の二行、
激しく同感します。^^
Commented by kaori_tochiu at 2009-10-25 21:38
こんばんは^^

先日、キノコ屋さんで干したコウタケを見ました。
干された状態で生のシイタケくらいの大きさになっていて
(って言ってもいろいろですけど・・・^^;)、
それが3~4個連なって2000円也~♪
店先でクンクン嗅いでみましたが
香りはよく分からなかったです(笑)
Commented by enzian at 2009-10-25 23:01
こんばんは~

かおりさんのところは
秋が深まってきましたか?

おぉ、そちらは干したものも売っているのですね。
コウタケの香りは、醤油の香りに近いのです。
慣れている人は、山で生えていると香りでわかるそうです。

ぼくだったら無理をしても買ってしまうかもしれないな‥‥
そしてその晩はコウタケの炊き込みご飯なのです。^^v
Commented by kaori_tochiu at 2009-10-26 11:49
秋というより初冬の趣が増してきました^^
あと2~3週間もすれば平地でも雪が降ります。

通りかかったキノコ屋さんは寂れた田舎町の商店街にありまして、聞いたことのない名前のキノコが多く並んでいました。干したコウタケは私も初めて見ました^^ こちらでも売っているところは多くないと思います。
そうそう、今は買えないのですけどいつかのために(笑)炊き込みご飯の作り方を教えてくださ~い\(*´ε`*)ノ
Commented by enzian at 2009-10-26 21:04
かおりさん

>あと2~3週間もすれば平地でも雪が降ります。

゛(/><)/ ひぃ

>通りかかったキノコ屋さんは寂れた田舎町の商店街にありまして、聞いたことのない名前のキノコが多く並んでいました。

あぁ楽しそう‥‥

>炊き込みご飯の作り方を

干したコウタケを水で戻して、
他の好みの具といっしょに炊飯器にポンッですよ。^^
(コウタケを戻した戻し汁を加えて
ご飯を炊く、という意見もあります。
(が、この辺りはどちらがよいか不明。^^;)
Commented by kaori_tochiu at 2009-10-26 21:57
おぉ~♪ ありがとうございます^^
けっこう簡単そうですね。
いつの日か試してみたいと思います♪
Commented by enzian at 2009-10-26 22:08
かおりさん

食べたら教えてね。^^

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