虹が見える時

横目で美しい虹を見た。そのときぼくは会議中で、いつものようにたどたどしい議事進行役に懸命だった。京都のちょうどその辺りはよく虹が出る場所として知られていて、考えてみれば、正面に比叡山が見えて、舟形を見下ろすこの会議室からも虹が見えてもおかしくない。最初に窓を見たとき、ガラスに油膜が張っているのかと思った。油膜を通して外からの光が反射していると思ったのだ。そのときはまだ色は分かれていなかった。

会議が進むにつれて、あれよあれよという間にいくつもの色が整然と分かれてゆき、それは紛れもない虹であることが横目でもわかるようになった。会議室は比較的高いところにあるから、下から見上げるのではなくちょうど虹と肩を並べるような感じの位置になっている。虹の “幅” を実感したのだ。それはけっこうぽってりとした厚みのあるもので、色と色の分かれ目がはっきりと見えた。彩られた空気を抱きかかえて持ち帰って自宅に置ければなんとよいだろうと、次に話すべきことを反芻しながら、ぼんやりと考えていた。

今年度最後の会議は、ここ数年間の取り組みを反映するものを見る機会だった。ぼくは会議の最後を虹に触れることで終えようと思った。今後も続く会議の一区切りと未来とを、じょうだんをまじえながらも、ほんの少しは本気で、虹でつなげようと考えたのだ。だが、そのような “締め” を思いついて、進行役の肩の荷が下りていくにつれて、みるみる虹は薄れてゆき、会議が終わるころにはあとかたもなく消えていた。

by enzian | 2010-02-28 11:57 | ※キャンパスで | Trackback | Comments(0)

トラックバックURL : http://enzian.exblog.jp/tb/13056017
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。

<< ミーニャ 『だいじょうぶ だいじょうぶ』... >>