「命の一滴 いただいて~岩手・漆の里の四季~」 (ハイビジョン特集)

コマーシャリズムやいっときの流行を追いかけ回す人やメディアからは自然と距離を置こうとしてしまう癖がある。言うまでもない、商才も流行をかぎ分けるセンスも当方に欠けているからにほかならない。嫉妬心ですね。こういう嫉妬心をかき立てるものがNHKにも最近目立つようになってきて、NHK大好きなぼくはいったいどうしたらよいものか困っていた。いっそ捨ててしまってきれいさっぱり忘れてしまおうか、などとも思っていたのである。

ところが、「命の一滴 いただいて~岩手・漆の里の四季~」 (ハイビジョン特集)を観てしまった。「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」(NHKスペシャル)は鳥肌の立つ秀作だったが、これも出色の出来だった。どちらも、命についてまじめに考えたいと思っているひとには格好の番組だと思えた。やはり、NHKとは観ざるをえないものの名なのだ。優秀なピーナッツのひとつふたつもあれば、それだけで柿の種一袋も食べられるのである。

「命の一滴」は、国産漆の大半を生産する山里で働く漆かき職人の1年を中心に編まれている。6月にはじまる漆かき作業の前に職人は服装やすべての道具を新しくし、神に祈り、神妙な面持ちで山に入る。漆かきは生きた漆の木肌に傷をつけることで樹液を採るが、職人はそれを「殺生」とも「生殺し」とも表現していた。殺生だという意識と、それでもやらねばならぬ生業(なりわい)であるという意識とのせめぎ合いがそうした面持ちを作るのだろう。穏やかに自宅で話す、幾星霜を経たかのような職人の顔もまた印象的であった。長野県にはキノコ狩りを「殺生」と表現する地方があると聞いたことがある。

by enzian | 2009-04-04 17:05 | ※テレビ・新聞より | Trackback | Comments(0)

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