菅浦(1)

b0037269_1310454.jpg湖西線の永原駅はそれなりに大きな駅だが、休日だというのにいっしょに降りる人もいない。

それは人気のないコンクリート製の要塞といった体(てい)のもので、駅の出口ではツバメの雛たちがヒィーヒィー鳴いている。透き通った黒水晶のような目と黄色いくちばしに抗(あらが)うこともできないのか、親たちがかいがいしく餌を運んでくる。自分が作り出したものに抗えなくなるとはさも不思議なことだが、自分に支配されることは動物にとっても一種の悦びなのかもしれない。

駅前にはほどよい水量の川が流れている。橋から下を見ている老人がいる。投網(とあみ)を打っているのだ。水にはときおり “ぐねり” ながら泳いでいる魚がいる。鮎に特徴的な泳ぎ方。淡海(おうみ、琵琶湖)に流れ込む小河川の多くと同様、この川にも鮎が遡上しているのである。投網には、黄味がかった銀色の魚がきらきら輝く。幼いころ、鮎は捕まえられない魚だった。泳ぎが速く手づかみでは捕らえられないマス科の小魚も、自分の速さで投網の網目に深々と首を突っ込んでしまう。投網の前では一網打尽なのだ。

やや泥深くてやたらと美しいというわけでもないが、川は田園の風景に溶け込んでいる。鮎だけではなくナマズやウナギも行き来するのだろう。ところどころモンドリ(魚を捕る仕掛け)が仕掛けられている。目を凝らして見るが、赤黒いアメリカザリガニが見えるだけで、お目当ての魚は入っていない。葦が繁り、菖蒲が咲いている。カワニナがたくさんいる。もうすぐ、このほとりではたくさんのホタルが飛び交うのだろう。

by enzian | 2010-06-05 13:49 | ※海を見に行く | Trackback | Comments(8)

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Commented by seedsbook at 2010-06-16 02:04 x

お久しぶりです。
蛍の飛び交うところはどんどん貴重になっている事でしょう。
Enzianさんの短い一文が昔の景色、光景を思い出させてくれました。陽のあたる道の匂いや白く飛んでしまったような光が一瞬。。。。
Commented by enzian at 2010-06-16 23:10
seedsbookさん

ご無沙汰しております。
とてもさみしいことですが、
ホタルは少しずつ情景の世界のものに
なりつつあるのかもしれません。

私の拙い言葉で、
seedsbookさんのなつかしい光景が
よみがえったのであれば、幸いです。
Commented by madeline_madeline at 2010-06-19 22:45
先ほど、ホタルを見てきました。
乱舞するほどいなかったのですが…

遠くにいたホタルが、近づいてきて
目の前でフワフワ舞ってくれました。

そのホタルを愛おしく感じてしまいました。
Commented by enzian at 2010-06-19 23:38
まどさん

ホタルを見に行かれたのですね。
いいなぁ‥‥
ぼくはまだ今年ホタルを見に行けてないのです。
乱舞もいいですが、数少ないホタルもいいですよね。
Commented by 毒きのこ at 2010-06-27 16:10 x
>菅浦(3)

ぬぉぉぉ!
衝撃的な展開だ・・先が気になります
Commented by enzian at 2010-06-27 20:10
毒きのこさん

こんばんは。
そんなに劇的には展開しないですよ。^^;
Commented by enzian at 2010-07-04 09:28
卒業生 2002さん

ぼくの実名が入っていたので、以下に転記しました。
ごめんね。

「ところてん」というと‥‥
O県出身?それとも京都?どっちの方?
文章を読むと後者かな‥‥^^

幸せそうならそうで何よりです。
近況を知らせてくれてありがとう。
ぼくもあなたのブログを読みに行かせてもらいます。
Commented by enzian at 2010-07-04 09:28
○○先生、こんにちは。

先生のブログを知ったのは、2年前ぐらいだったな。
無意識のうちに入力した検索ワードから、『小さな哲学』にたどり着いたような気がします。
グーグルのアルゴリズム、恐るべし。

今年で30歳になりました。結婚もしました、去年は長女が生まれました。レッドボーンク―ンハウンドという犬種の、手がつけれないほど元気な犬も飼っております。

先生もご存じの通り、すぐに自分に自惚れるという悪い癖は、大学生のときから変わりません。変わったのは自分がそれに陥ったときに、少しだけどモニタリングできるようになったことぐらい。

でも、そんなときに先生のブログを読むのです。半径5メートルにあるものを再認識するためです。
『ところてん製造機』に『ところてん原料』を入れて、注意深くゆっくりと押し出していくのです。
(この”比喩”は、○○先生からパクりました。ごめんなさい)

日曜日の朝にこのような文章を書くのはなかなか気持ちいいものです。

また読みに来ますね。

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