菅浦(4)

b0037269_891179.jpg「地元のもんも使わんもんやから、バスもすっと行ってしまいよるんです」。2時間に1本のバスでは、それをあてにして生活することもできまい。安くもないJRに乗って、めったに来ないバスを継いで隠れ里まで行く観光客もほとんどいないだろう。こうして、細々と運行されている路線バスもいずれは廃止されるのだろうか。

「ここらへんのもんはみなひとがようて、さびしいもんやさけぇ、ひとが来たら、誰彼となく話しかけよるんですわ」。それは、田舎で育った自分がもつ田舎の人間の定義ではなかった。ぼくにとって田舎者とは、表面は慇懃でも裏では陰湿な行動で自分の地域以外の、いや自分の家族以外の人間を秘かに “他所者” として区別し、決して近づけようとはしない、一定地域に暮らす人間たちの謂(い)いなのだ。

しかしそうした考えが誤りであることをこの男性が示しているように思える。疑うのはたやすいが、ぼくであれば「歩いて帰ります」と言われて、「それでも送りましょう」とは言わなかった。「そうですか」とすぐ引き下がっただろう。それを許さないこのひとの力強さはどこから出てくるのだろうか。それは自信なのだろうか。勇気なのだろうか。それとも別のものなのだろうか。いずれにせよ、そのようなものを自分は持ち合わせていない。限定された空間に住む者ではなく、住む場所を問わず排他的な精神しかもたぬ小心者こそが “田舎者” なのではないか。

菅浦にいたる道には山肌が迫っている。「私の若いころ、まだこの道はなくて、この奥のもんは小学校へ行くときには1時間歩き、入り江で手漕ぎ舟に乗って、また歩きました。それは不便なもんでした」。降りしきる雪のなかを歩き続ける小さな子どもの姿が浮かんだ。冬は雪で埋まる多雪の地で、小集落に通じる道が自衛隊員の手によってようやく整備されたのは1965年のことであったという。それまでよそよそしかった「自衛隊」という言葉がにわかに明るく温かくなってきて、はじめて身に親しい言葉になったような気がした。

by enzian | 2010-07-03 23:59 | ※海を見に行く | Trackback | Comments(12)

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Commented by enzian at 2010-07-18 08:18
(こみちさんより、FC2ブログの記事にもらったコメントです。)

良かったです!
ブログの移行、うまくいってよかったですね!
丁寧にご報告くださり、ありがとうございました。
~つづき を楽しみにしています。
Commented by enzian at 2010-07-18 08:19
(enzianがFC2ブログでレスしたコメントです。)

ありがとう。コメント第1号です。^^
こちらのブログはまだわからないことが多いので、
いまはいろいろ調べています。

だいじょうぶだと思ったら、
過去の記事も移動するつもりです。
Commented by enzian at 2010-07-18 08:20
(毒きのこさんより、FC2ブログの記事にもらったコメントです。)


開いてる田舎と、閉じている田舎ってありますよね
開いているところは、どこまでもオープンで
閉じているところは、どこまでもクローズで

enzianさんが体験されたように
たしかにあると思います

テレビで、田舎を有名人(ちょっとだけ?)が訪ね
泊らせてもらう番組があります・・・
この番組あんまり好きじゃないのですが・・
大都会の人が、田舎=なんでもOKしてくれる優しい人、って思い込みがずいぶんなような気がして
そういう人が企画した魂胆がどうも・・・


お引っ越しおめでとうございます!
(ん?、でよいのかなぁ・・)
Commented by enzian at 2010-07-18 08:21
(enzianがFC2ブログでレスしたコメントです。)

毒きのこさんの考えている理由とまったく同じで、
ぼくもあの番組、かなり苦手です。

>お引っ越しおめでとうございます!
(ん?、でよいのかなぁ・・)

ほんとはエキサイトで続けたいのですがねぇ、
複雑な気分どす。( ̄Д ̄;;
Commented by enzian at 2010-07-18 08:25
(ひばりさん〔http://hibari2.blogzine.jp/〕より、
FC2ブログの記事にもらったコメントです。)

いつも楽しみに訪問させていただいています。
引っ越し先に無事にたどり着けました。
以前のところで更新ないなあとうろうろしてました。
田舎・・素敵な出会いでしたね。続きが楽しみです。
Commented by enzian at 2010-07-18 08:26
(enzianがFC2ブログでレスしたコメントです。)

コメント、ありがとうです。

>以前のところで更新ないなあとうろうろしてました。

申し訳ないです。^^;
今後ともよろしくです。
Commented by 毒きのこ at 2010-07-28 09:08 x
さいきんよくこの”田舎者”について考えることがあるのですが・・もちろん風光明媚な自然にかこまれた土地に暮らす人々のことを、一般的には指したりするのだと思います・・

でも、その【排他的な精神の小心者こそが”田舎者”】の人々は、けっこうあらゆるとことに生息していますね・・うちの親とわたしはいわゆる何十年前に開発された、郊外の新興住宅地にずっと住んでいます。ここ10年くらいに目立っているのですが、古くから住む人が何かの事情でこの土地を離れ売家になり、かなりの率で新しい人がその家を買って住み始めているのです。古くからいる人も、新しい人も、先祖代々続く土着の人じゃないのだから、たった数十年早くに先に住んだかどうかなのだから・・互いに仲良くすればいいのにって・・思うのですが・・・しょうもないことでご近所トラブルが勃発しています・・生活音(騒音)や駐車(迷惑駐車)や町内会(人間関係)です。譲りあい、お互いさま、思いやりをこころがければいいものなのに、昔から住む人格者と言われたある住人の方でさえも
新しく越してきた若い家族のこどもの声に我慢ならぬといちゃもん、驚きました(;一_一)
Commented by 毒きのこ at 2010-07-28 09:08 x
いつのまにかこの新興住宅地はたった数十年のうちに、新しい流入者を迎えたことによってか、村のようになり、見えない掟ができ、他者を受け付けない、ズバリ、田舎者のコミュ二ティと変貌しているのです・・いっけん瀟洒な良い感じに年を重ねた閑静な住宅街なのですが・・

最近は目立った御近所トラブルは表面的には沈静化したように
思えたのですが・・よく聞いてみると、直接の対話やかかわりは避けて、警察(派出所)や弁護士や行政や企業(自宅の改修工事の時など、神経質なまでにご近所への気配りをする建築会社が増えています。その家主はぜったい前面には出しません)など、第三者をはさむことが多く見受けられます・・

いわゆる伝統的な田舎の一部が陰険といった要素をふくむとしたら、今のわたしが住むエリアは陰険に移行しそうでしたが、もともとの土着性が薄いこともあるのか、”殺伐”とした方向である意味落ち着きそうではあるようです・・

なんだか、寂しいですけどね・・((+_+))

Commented by enzian at 2010-07-31 23:58
毒きのこさん

考えさせられる情報をありがとうです。
たった数十年の新興住宅街でも
そんなことが起きるのですね。

特に興味深いと思ったのは、
その殺伐さです。
おもしろいですね。
(いや、毒きのこさにとっては
おもしろいことではないのでしょうが。汗)
Commented by 毒きのこ at 2010-08-01 13:49 x
>おもしろいですね。(いや、毒きのこさにとってはおもしろいことではないのでしょうが。汗)

いえいえ。
わたしもほんと、面白い(興味深い)と思ってるのです。汗
↑ちなみに、わたしの(汗)これは猛暑のための汗です(*^_^*)


これはまぁ、仮説にすぎないのですが・・
この路線バスの人の田舎度は陰湿でもなく殺伐でもなく
健全だと思うのです
ちょうどい、湿り気・・・
それは人間らしさをはぐくむものなのでしょう

陰湿であったなら、腐らせてしまうでしょうし
崩れかかりつつも根深い面もあるような気もします
底なし沼となり、住まう人の足を嵌らせるのです
その田舎からはそう簡単に抜け出せないのです
いっそのこと菌となり、キノコと言う道もありますが・・

殺伐では、焼け石に水のごとく、荒涼とし、何も生えません
定着して代々は続かず、ラクダに乗った旅人のようでもあります
他人にかかわってるひまもなく
もし情けを起こしたが最後
水気のない土地では、それは終焉を意味するのです
Commented by 毒きのこ at 2010-08-01 14:09 x
動植物同様に人間が住む環境も
科学的な物では計測が難しい

水(+だと陰湿、-だと殺伐)
太陽(+は過剰にギラついた目で干渉、-だと無関心で冷やか)
酸素(+飽和異常で溺れ、-では窒息し他へ空気を求め)

の、ようなものがあるのでしょう・・

それらはわたしたち人間が生きるために欠かせないのですが
多くても、少なすぎてもいけないもので
絶妙なバランス(自然の摂理?)でもって成り立っているのでしょう
アンバランスな環境に住まうものは
居心地の悪さ、寂しさ、息苦しさを感じるでしょうし
良い環境に住まうものは
オープンで朗らかで友好的でもあるかもしれません
恒久的に同じで在り続けることは難しく
ちょとした不具合でバランスが崩れることもあるでしょうし・・


なんちゃって、夏休みの宿題ふうに語ってみまちたぁ♪

Commented by enzian at 2010-08-01 23:13
毒きのこさん

猛暑のための汗だったのね。
わかりまったけ。

>殺伐では、焼け石に水のごとく、荒涼とし、何も生えません
定着して代々は続かず、ラクダに乗った旅人のようでもあります
他人にかかわってるひまもなく
もし情けを起こしたが最後
水気のない土地では、それは終焉を意味するのです

何も生えないのは困りますなぁ。
キノコが生えないようでは困ります。
それなりの湿り気が必要ですね。

>多くても、少なすぎてもいけないもので
絶妙なバランス(自然の摂理?)でもって成り立っているのでしょう

そうですね。

7月末にたくさんレポート書かなかった?^^

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