輪ゴム

電車のなかで隣に座っていたおばあさんが腕に輪ゴムを巻いていた。あぁこういうことをするひとがやはりいるのだと思った。いつも祖母が腕に輪ゴムを一本巻いていたからだ。その当時から輪ゴムを巻く理由はわからなかった。必要なときにいつでも使えるように巻いているのだろうと思っていた。若いひとには想像できないかもしれないが、輪ゴム一本が貴重だった時代があった。輪ゴムがきらきら輝いていたときがあったのだ(大げさか)。

だが、あるとき、祖母が腕のところに、ふつうの裁縫で使うような糸を巻いていたことがあった。「これなに?」と聞いたら、「まじない」と祖母は答えた。なんのまじないかは聞かなかった。――そうしてぼくは、腕の輪ゴムがいつでも使えるようにか、謎のまじないのためか、それともそれ以外の意味があるのか、わからなくなったのだ。いまでもその理由はわからないのだが、この謎を解きたいとは思わない。

by enzian | 2010-08-03 22:26 | ※通勤途中 | Comments(0)

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