才色兼備の植物

今年も葉ボタン(葉牡丹)の季節がやってきた。一般家庭の庭先だけでなく、街角の花壇でも葉ボタンを植える人がせっせと作業をしている。それを見て、ぼくは一人涙する。3ヶ月後に起きる葉ボタンの悲劇を思うと、涙がとめどなく流れるのだ。

葉ボタンは、だらしないキャベツに色のついたような植物である。キャベツを含むアブラナ科の植物は春先に花を咲かせるものが多い。葉ボタンも同じで、それまでだらしないキャベツ状であったものが、春先になると、中央のせり出した巻貝状になって、とう(花軸)が立ち、見るも無残な形になってくる。色も、年末年始の頃の美しさは影も形もなくなる。そうなると用済みに興味なし。ポイッとなる。無残にプッツリ切られた葉ボタンの山。それならまだいい。いっそのことプッツリ切ってくれればいいのに、鉢ごとぶっちゃけられ(投げ捨てられ)、それでもわずかに根に残った土から栄養をとって、必死であらぬ方へとうを伸ばそうとして、なおかつそれを見つけられて念入りに踏みつけられた葉ボタン。そんなかわいそうな葉ボタンをそこここで見るのは、ちょうどその頃だ。

だが、誰も知らない。葉ボタンが食べられるということを。しかも、希に見る栄養豊富な天賦の植物であることを。植物オタクでもあるぼくの知見によれば、葉ボタンは八重山諸島では、別名「畑の豚足」と呼ばれて、古くから食べ継がれてきた。意味がわからないって?要するに、美容によいと言われているコラーゲンが豊富に含まれているのだ。八重山諸島の一つ、曾宇島にお肌ツヤツヤの美人が多いと言われるのは、そのせいだとぼくはにらんでいる。植物がコラーゲンを含むのは非常に希な例なのだけど、葉ボタンがまさにその希な例なのだ。そして、もう一つ、葉ボタンの含む栄養には特筆すべきものがある。それは、わずかではあるがあのDHA(不飽和脂肪酸の一種)を含んでいるということだ。青い背の魚にたくさん含まれていて、頭がよくなるというあれである。

もちろん、コラーゲンやDHAの存在が昔から確かめられていたわけではないが、葉ボタンがこの種の栄養素を含むことは一部の地域では経験的に知られていたらしい。ドイツの一地方にあるアハトフンダート*村では、葉ボタンが「才色兼備の植物」(もちろん、ドイツ語)と呼ばれ珍重されていたことが、高名な哲学者の書物にも書かれている。そうなのである。春になって葉ボタンを捨てるほどもったいないことはないのだ。一般家庭の奥様方、街角を闊歩する貴女。「ヤダァ。こんなの食べるとホントにとうが立っちゃう!」とかなんとか言わないで、春先の葉ボタンジュースで才色兼備とやらを目指そうではありませんか!!――あ~ウソをついてすっきりした。怒らないでね。

*アハトフンダート(ドイツ語で「800」の意味)

by enzian | 2004-12-12 16:26 | ※街を歩く | Trackback | Comments(3)

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Commented by jumpin_upanddown at 2004-12-13 21:46
コラーゲンに反応したのですが、騙されました。

Commented by enzian at 2004-12-13 23:37
ケラケラ。
Commented by jumpin_upanddown at 2004-12-14 00:24
キーッ!

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