鉦の音

b0037269_19512341.jpgしばらく聞き慣れない虫が鳴いていた。音が近いので、書斎の外の壁で鳴いているのだろうと思っていた。高い音でチン、チン、チンと一定の間隔で鳴く。調べてみたら、カネタタキ(鉦叩き、鉦は祇園祭のコンチキチンの音)であった。こやつなら以前、洗濯機の下で何回か見たことがある。先日は蜘蛛の侵入を書いたが、侵入頻度の高さでは、毎年侵入してくるカネタタキの方が上手なのだ。

ひょっとしたら家のなかで鳴いているのかもしれないと思いはじめていたら、案の定、朝、書斎の本を移動させたらカネタタキが出てきた。すばしっこくて困ったが、怪我をさせないよう壜(びん)に入れて、少々撮らせていただいて、庭先に放した。メスが欲しければおとなしく庭先で鳴いておればよいものを、なぜ家にいたのかと聞きたくなる。彼はもう何日も無駄にメスを呼んでいたのだ。アシダカグモといい、カネタタキといい、なぜ、なにもない我が家に侵入を試みようとするのか、虫の神様がいるのなら尋ねてみたい。

ぼくの両親は少し親しくなったと思ったら、ほとんど距離がないほどに友人たちに近づくひとたちだった。夜な夜な友人宅に出かけ、物を渡し、そして最後には必ずけんか別れした。ぼくはそのさまを見て、悪意はないにしても、愚かだと思った。しかし悲しいかな、あるとき、自分もその血を引いていることに気づいた。放っておけば他人に土足で踏み込もうとする性質をいかに制御してひとに近づかないままでいることができるか、もっと冷たく、もっと遠くに、それがたぶん生涯にわたる自分の課題なのだ。

今晩は鉦の音が聞こえない。聞こえなくなると、やはりさびしいものだな。

by enzian | 2009-09-15 20:48 | ※その他 | Comments(0)

<< 10円玉リスト 平行線 >>