リンゴ

戻ってきたら、ドアのところにリンゴの入った袋がかけてあった。袋を部屋に持ち込むと、部屋中に爽やかな香りが漂った。リンゴにこれほどの香りがあるとはちょっと驚きであった。寝室に置けばよく眠れるという話を聞いたような気がするが、本当なのかもしれない。リンゴはあこがれだった。「リンゴ」と聞いただけでほんの少し幸せな気分になれた。関西に育ったぼくはリンゴが実った木を見たことがなかった。このような美しい形のものが房なりに実ったさまをいつか見たいものだと思っていた。

本物のリンゴが実っているさまを見るのが待ちきれなくて、姫リンゴの苗木を買って欲しいとねだった。2年目の秋になって、待ちに待った姫リンゴが実った。ぼくは赤くて小さなリンゴをかじった。それはさして甘いものでもなかったが、たしかにリンゴの味がした。

by enzian | 2009-12-12 22:37 | ※キャンパスで | Comments(0)

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