大団円

b0037269_2231730.jpg少し肌寒いので、近所に見つけた小さなロシア料理店にゆく。ささやかに「うめぇうめぇ」と羊のように鳴きながら酸っぱめの前菜を一人食っていたら、喪服姿のご老人たちが入ってきた。男一人、女二人。

法事が終わったあとらしいが、しみじみした様子ではなく、わいわいと騒がしい。スープぐらいを注文するのかなと思っていたら、ビールに前菜にボルシチに、ビーフストロガノフやらロシア風ハンバーグやらを頼んで、ばくばく食べている。話の内容がまたすごい。ありとあらゆる病気、疾患の話が出てきて、それぞれの疾患をもった知人たちの思い出話にどす黒い花が咲いている。

つぎからつぎに繰り出される恐ろしげな病名に、ぼくの耳はすっかり萎縮してしまった。こんな盛り上がり方も世の中にはあるのだ。たま~に病院にいったりすると、病院が老人たちの一種の社交場のようになっていることに気づくが、病院の社交場でもこういう話がなされているのだろうか。こういう場合、ながい人生の経験のなかで、“話が合いやすい” のは老人同士ということになってしまうのだろうが、少し悲しくもある。

さんざ食って、小さな店中をどす黒いお花畑にして、最後に締めの言葉としておばあさんが言った言葉がよかった。「まぁいろいろありますけど、人生、楽しくやりましょう」。ピロシキをかじりながら、ぼくは「すげぇ」とつぶやいた。

by enzian | 2011-06-02 22:05 | ※街を歩く | Comments(0)

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