美と崇高

夜中、年賀状をポストに投函する。空気が澄み渡り、星空がぞっとするほどきれいだ。しばらく見とれる。こういうのを、崇高(すうこう)と言うんだろうなと、ふと思う。ふつうに美しい「美」と、ちょっと怖いような美しさの「崇高」を分ける人がいるのだ。小さな花や牧歌的な風景の美しさはふつうの美だけど、そびえ立つ山並みとか、波打つ海原の美しさは崇高ということになる。

なぜ星空は崇高なのだろうか?まず、星空は美しいんだけど、宇宙の空間的な広がりに比べて、自分が圧倒的に小さいことが恐怖心にもなる。自分もそうだし、自分から見れば無限の広がりをもつと思える地球でさえ、宇宙のなかでは点にすぎないのだろう。次に、宇宙は時間的にも圧倒的な広がりをもっているから、それに対する自分の時間的な小ささ(短さ)も恐怖心になる。宇宙がはじまったのが何億年前かはよく知らないけど、ともかく気の遠くなるほど昔からあることはまちがいない。ぼくが見た一瞬の星の光も、何千年、何万年、場合によっては何億年の旅をしてきた光なのだ。それに比べれば、自分の生涯のなんと短いことか。

何千年、何万年前の星の光を見ることは、過去を見るのに似ているかもしれない。そう考えると、前に書いた、星空を見るとしんみりすることの理由もわかる気がする。ぼくの場合、過去は、失敗の記憶の束なのだ。もちろん、よい記憶もあるが、どちらかというと失敗の記憶が優勢で、過去は全体として苦い記憶に彩られている。澄み切った星空に自分の失態を重ね合わせて正視しようとするなら、夜空を見上げて、しんみりするのもわからないではない。すばらしい記憶に満ちた過去の持ち主なら、星空を見上げて、にやけることができるのだろうか。

by enzian | 2005-01-03 17:23 | ※自然のなかで | Trackback(1) | Comments(10)

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Tracked from とこちゃいの空 at 2005-11-23 18:25
タイトル : 星空と宇宙
先月「地球は美しく醜い、されど宇宙は美しい。なぜなのか?」なんてタイトルの記事を書いた。 エンツィアンさんの「『美しい』とはどういうことか」に触発され自分も考えてみようと思ったのだ。 結局わからなかったけれど、エンツィアンさんの元に集まった85のコメントは圧巻である。 その後、アイスさんが宇宙と嗅覚を切り口に「あの人の香り」で「美」を哲学していた。 近海を泳ぐマグロが宇宙を眺めつつ香りと記憶と美と孤独を小説形式で歌い上げた作品である。 また、先日はスイスの殿の記事「【あるとき~】【ないと...... more
Commented at 2005-11-22 01:48
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2005-11-22 01:49
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by toko_chai88 at 2005-11-22 17:33
「半径5メートル以内の美」と「何万光年彼方に広がる美」
「小さきものへの愛しさ」と「壮大なものへの畏敬」

「自分」という存在との対比において感じる距離やスケール。
この「自分」というのは「過去の集積」によって形成されている。
この集積された「過去」というのは無機物ではなく「甘さ・苦さ」を伴うもの。

夜空を見上げてしんみりする人とにやける人かぁ。
同じ月を見ても感じるものは人それぞれですもんなぁ.。o○

「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」安倍仲麿
「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」藤原道長

どちらの月が美しいか、ではない。
ただ、うちには道長さんの月が見えません・・・。(^_^;)

そしてお星様はお月様より、もっともっと遠いところにあって、たくさんたくさんある。

まるで天が落ちてきそうなほどにぞっとするような美しい星空。
残念ながら生で体感したことがありません。
プラネタリウムの星空とはちゃうんやろなぁ.。o○
Commented by enzian at 2005-11-22 18:38
鍵コメ1、2さま

わぁ、光の当たらなかった記事にコメントが‥‥
ありがとうございます。
レスはそちらにお返ししますね^^
Commented by enzian at 2005-11-22 18:46
とこちゃいさん

こちらまで力作を、ありがと。

>「半径5メートル以内の美」と「何万光年彼方に広がる美」
「小さきものへの愛しさ」と「壮大なものへの畏敬」

あっ!なるほど、そうまとめますか。
とこちゃいさんは、すごくよく文章を読んで、
よく理解したうえで文章を書かれるんですね。

>「自分」という存在との対比において感じる距離やスケール。
この「自分」というのは「過去の集積」によって形成されている。
この集積された「過去」というのは無機物ではなく「甘さ・苦さ」を伴うもの。

甘さ、苦さを伴います。
あっ!酸っぱさもあるかもしれん^^
Commented by enzian at 2005-11-22 18:47
(とこちゃいさん、続き)

>夜空を見上げてしんみりする人とにやける人かぁ。
同じ月を見ても感じるものは人それぞれですもんなぁ.。o○

「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」安倍仲麿
「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」藤原道長

どちらの月が美しいか、ではない。
ただ、うちには道長さんの月が見えません・・・。(^_^;)

人それぞれですなぁ、ほんとに。
ぼくも道長さんには興味がないなぁ。
違う世界の人だなぁ‥‥

>まるで天が落ちてきそうなほどにぞっとするような美しい星空。
残念ながら生で体感したことがありません。
プラネタリウムの星空とはちゃうんやろなぁ.。o○

天が落ちてくるような空、いいですね。
ぞくぞくします。
個人的には、波照間島という島へ(ほとんどの星座を見ることができる)
星を見るためにだけ行こうと、虎視眈々と狙っているのです^^v
Commented at 2005-11-24 23:45
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Commented by enzian at 2005-11-25 00:24
鍵コメ3さま

ふふっ、もちろん、ぼくはなんとも思っておりませんが、
お気がおさまるということでしたら、
お受けいたしましょう(^^)

染みますか‥‥

忙しいですね。
お互い、社会人ですから。
ぼくは明日からちょこっと休みなのです。
もちろん、休み=自宅で仕事、ですが‥‥
また、遊びにまいります。

Commented at 2005-11-25 19:11
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Commented by enzian at 2005-11-25 20:22
上記、鍵コメ4さま

メールにてお返事しました。
よろしくお願いします。

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