しゃべる自販機

b0037269_12161575.jpg飲み物を買うと、べたべたの大阪弁やらでべらべらと話しはじめる自動販売機がある。ジュースを買った女性が友人にいっている。「恥ずかしくて、ひとりでは買えんかったわ」。

自販機というものができたとき、どこでもいつでも買えるという便利さを喜んだひとは多いだろうけど、その便利さのなかには、「あぁこれでひとと話さずにものを買うことができる、やれやれ」ということも含まれていたのではないか。「いらっしゃいませ」「まいど」「どれにいたしましょうか」という話しかけは、円滑なコミュニケーションの手段であるにしても、買い手の側にも都合があって、今日に限っては話しかけないで欲しい、この店については「まいど」といってほしくない、そっとしておいて欲しいということもある。

みんなかどうかはわからないが、少なくともぼくは、いつもつながりを意識しながら生活しているのではなく、つながりを微妙にオンオフしながら生活している。どうしてもつながりという言葉が必要なら、つながりを維持するためにつながりをオンオフしている。四六時中つながりを十分に意識できなければやっていけないというなら、そのほうが非常事態なのだ。「いらっしゃいませ」を全店員で “輪唱” する合唱系の飲食店や、マニュアルどおりに店全体で前のめりになって話しかけてくるコンビニが多くなってきたなかで、ものいわぬ自販機は、ときに、つながりを過度に求める時勢のなかでは「いま飲みたい」という渇きを癒すときのオアシスなのではないか。もちろん、話しかける自販機がこうして話題になること自体がメーカーとしての広報的な狙いなのだろうが。

by enzian | 2012-05-06 12:26 | ※街を歩く | Comments(0)

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