卒業生の戻れない学校

大阪の寝屋川で教師殺傷事件が起こって、大変なことになった、と心底、思ってしまった。亡くなった先生は教育熱心な方だったらしく、そのことが残念なのは言うまでもないことだけど、ぼくが大変だと思ったのは、このたった一件の事件(こういう言い方をしても、この事件が軽々しいものだと言っているのではない。念のため)が教育現場に及ぼす影響についてなのだ。

同じ大阪で起こった児童殺傷事件で、教育現場に高いフェンスを設置したり、門に鍵をかけることなど、侵入者に対する対策が講じられたことは記憶に新しいけど、今回の事件の後、教育現場にはどんな変化が起きるのだろうか。高いフェンス設置の徹底、施錠の徹底、門衛の配置、インターフォンの設置‥‥。訪問者がたとえ卒業生であっても簡単には侵入させないような防犯システムがつくられるのだろうか。教師と卒業生がインターフォン越しで話すような。安全のために致し方ないとはいえ。

ぼくが通った大学院は正門をくぐるとすぐ広大な芝生が拡がっていた。そこでは、思い思いにくつろぐ大学生たちにまざって、近くの幼稚園の園児たちがお遊戯(?)をしたり、近所の人が犬をつれてきて戯れたりしていた。そんな無駄なすペースがあるなら学舎の一つでも建てればいいじゃないかと言う人もいるかもしれないが、ぼくはそういうスペースが好きだったし、そういうのんびりした “遊び” の空間を許す学校の精神がとても好きだった。

今のところ、大学に小学校や中学校のような防犯システムを導入しようとする動きはない。でも、小学校に起きたことが大学に起こらないとは限らない。すべからく教師とは恨みを買う仕事でもあるのだ。亡くなった先生は、卒業生と会うのを楽しみにしていたらしい。その気持ちは教師であればよくわかる。すでに手を離れたはずの卒業生がフラリと顔を見せる。自分がしたことが誤りではなかったと確信できる瞬間。これがどれほどうれしいことか。そのようなささやかな喜びも、今後、教育現場から削ぎ落とされてゆくのだろうか。

by enzian | 2005-02-16 22:20 | ※キャンパスで | Trackback | Comments(8)

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Commented by shou20031 at 2005-02-16 23:00
いったい誰の責任なのでしょうね。二度と起こしてはならないってコメントあるでしょう。でも品を変え形をかえおなじような事件はおきるのではないでしょうか。犯人がいけないのか。でも彼が勝手に不登校にあったわけでもないし。原因がるのだとおもうけれど、でも今更って感じではないのかな。結局責められるのは両親だけなのでしょう。
Commented by enzian at 2005-02-16 23:27
犯人がなぜ学校を襲ったのかは、まだはっきりしていないようですね。理由は複雑でも、危険があるならそれを避ける策を講じなくてはならないのでしょう。昔のように信頼関係だけではやってゆけないのですから。悲しいことですが。
Commented by shirokuma_14 at 2005-02-17 12:43
お久しぶりです。^^
このような事件が起こり、それ以上の事件が起こり、その度に対策を講じる。学校はこの先どうなっていくのでしょう。。
もし、完全に守られた環境で子供たちが学ぶなら、危険について何処で学ぶというのでしょう。いま、子供たちは遊ぶにしても勉強するにしても、守られた環境(閉鎖的な環境)が殆どですね。これから、更に閉鎖的になっていくのでしょうか、、、。
Commented by enzian at 2005-02-17 15:12
shirokuma_14さんへ。おひさしぶりです。まったくおっしゃる通りです。すみずみまで納得なのですが、下手なコメントをすると失敗しそうなので、これ以上は黙っておきます。
Commented by shoko_118 at 2005-02-17 19:22
知り合いが二人、関西で教師をしているので、ニュースを見た時には固まってしまいました。
心に闇を抱えた子供、人間がたくさんいるのだな、と。
たとえば、enzianさんが危惧されているように、これから過剰な防御がますます一般化し、恩師に会うのもままならなくなるとしたら・・・・。
それは哀しいとしかいい様がありません。
哀しい・・・以外、あたしには言葉が浮かびません、ホントに。。。
Commented by enzian at 2005-02-17 20:10
少年の闇は複雑なようですね。そういう子どもが増えてくるとしたら、教育現場はたいへんです。誰も人間を信用できないような過剰な防御のなかで教育をしなければならないんでしょうね。ほんとうに、学生にとっても教師にとっても哀しいことです。
Commented by manchester at 2005-02-17 21:18 x
少年が先生に対して抱いたと言われる「恨み」は、根拠のないものかもしれないですし、彼の証言を鵜呑みにしてはいけないとは思っています。しかし、ニュースを見ながら、「変な先生もいっぱいいるからなあ」という思いが私にはふつふつと湧いてきます。でも、恨みは何かに転化しなければどうしようもないと思うんですけれどね。たとえ本当に少年が正当な理由で恨みを持っていたとしても。
でも、何だかんだいっても、お世話になった先生が学校にもたくさんいらっしゃいます。卒業生だと言っても疑われるかと思ったら空恐ろしくなります。
Commented by enzian at 2005-02-17 21:21
>卒業生だと言っても疑われるかと思ったら空恐ろしくなります。
そんなことになったら、たとえよい先生がいる学校であっても、戻る気にはなれないですよね。それが、困ることなんです。学生にとっても、教師にとっても。

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