『花さき山』

b0037269_217517.jpg今日は絵本を紹介しましょう。斉藤隆介・作、滝平二郎・絵『花さき山』です。ライフログにも載せている、ぼくの大好きな絵本です。わずかな言葉になるストーリーを伝えしてしまうのは無粋というものですから、どういう点が好ましいのか、ぼんやりと書いておきましょう。

まず、この滝平二郎の版画。有名な『もちもちの木』『八郎』『三コ』『ベロ出しチョンマ』といった作品も手がけた方です。素朴な味わいの版画には、素朴さだけにはとどまらず、民の喜びや悲しみや苦しみが複雑に刻み込まれています。髪を振り乱した山姥、山姥に脅える少女、慈しみに満ちて赤子を抱く母‥‥描かれている女性を見るだけでも楽しい。祭りの版画からは、今にも、笛や太鼓の調べに乗って人々の喜びの声が聞こえてくるかのようです。

滝平の版画にぴたりと合ったストーリー(普通、ストーリーに合った版画って言いますよね)は斉藤隆介によるもの。上にあげた作品はすべて斉藤のものでもあります。斉藤の物語には、道徳的な教訓を伝えるかのようなものが多いのですが、この作品もまたその種のもの。一言で言えば、“おもいやりの裏面にあるストイックさ” がモチーフになっているのでしょう。ただ、『八郎』や『三コ』や『ベロ出しチョンマ』ほどは重くなく、もう少しささやかなものです。

残念ながら、ささやかなおもいやりとかストイックさが嘲笑の的となる時代になってしまいましたが、ぼくは斉藤や滝平の伝えようとするものが好きですね。きっと、ないものねだりなのでしょうって?あいあい、さようにござい。

by enzian | 2005-07-14 22:14 | ※好きな絵本(コミック) | Trackback | Comments(32)

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Commented at 2005-07-14 22:26
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Commented by jumpin_upanddown at 2005-07-14 22:46
運命のひとですか? ( 'ー`)
(「きも!」とか言ったらだめですよ!)
すぐわかりますよね。
Commented by 毒きのこ at 2005-07-14 22:51 x
>描かれている女性を見るだけでも楽しい。
>きっと、ないものねだりなのでしょうって?

enzianさんは 憧れにも似た感覚で 眩しいっ てな感じで この絵本を受け止めたのかな

*ちなみに この絵本の P7~8の絵と文が壷っだよ わたしは

Commented by enzian at 2005-07-14 23:00
jumpin_upanddownさん

( 'ー`) ←こやつの表情がいまひとつわからなくて‥‥
      たぶん、すごく喜んでるんだろうけど、
恥ずかしくて、うまく表現できないんだろうね(わかる、わかる^^)。
Commented by enzian at 2005-07-14 23:01
毒きのこさん

P7~8って、どこですか?
ページ数がないので、どこのことやら‥‥
Commented by 毒きのこ at 2005-07-14 23:05 x
ごめん ごめん

え~”この花は、ふもとの 村のにんげんが~”ではじまる見開きの両ページです
Commented by enzian at 2005-07-14 23:15
毒きのこさん

わかりました。
ぼくは、

ソレ、そこに、つゆを のせて ってところも好きですね。

Commented by 毒きのこ at 2005-07-14 23:19 x
>ソレ、そこに、つゆを のせて 

あ~そっか。うん。うん。
これには深い意味があるんじゃ。花の色といい・・・確か
ふたごなの??
Commented by enzian at 2005-07-14 23:31
毒きのこさん

ふたご。
だからわずかな生まれ時間の違いでおにいちゃんだとがまんしてる、
そういうところがけなげみたいなんだろうね。

小さな男の子は“青”のイメージかな。
Commented by banri at 2005-07-14 23:44 x
こんばんは、enzianさん。
昨晩はお泊りお疲れ様でするw(何となく・・)

この本は存じませんが私の中では「モチモチの木」がとってもインパクトありました。
私は元々絵描き人だったのでこの滝平二郎さんの版画にはとんでもない衝撃を受けた記憶があります。
版画なのになんという深みと奥行きなのか・・・・
今になったらそう思いますが初めて目にしたのが小学校2年生の時だったので訳のわからない衝撃を受け、今でもその衝撃をはっきりと覚えている程です。

実は常々童話ってとっても奥深いと思っています。
幼い時にしか読んだ事のない童話(絵本)をいまだに覚えているって事は
多分どんな書物よりも自分の根幹に関わっているのだと。。
ちなみに、「かたあしダチョウのエルフ」というお話はご存知ですか?
自分が2歳か3歳の時に読んだきりの童話ですがいまだにエルフの事が
忘れられません。
Commented by enzian at 2005-07-14 23:57
こんばんは、banriさん

>私は元々絵描き人だったので

そうなんですか!
なんか、絵、描いてください(すぐそういうことを言うやつなのです、許してください)
ぼくは絵が書ける人を尊敬してしまうのです。

『もちもちの木』はぼくにもインパクトがありました。
モチーフとはずれると思いますが、
もちもちの木の実のおいしそうだったことも印象に残っています。

>実は常々童話ってとっても奥深いと思っています。
幼い時にしか読んだ事のない童話(絵本)をいまだに覚えているって事は
多分どんな書物よりも自分の根幹に関わっているのだと。。

そうですね。人間の根幹にうったえかけようとする‥‥
この辺り、ちょっと考えてみたいと思います。

>ちなみに、「かたあしダチョウのエルフ」というお話はご存知ですか?
自分が2歳か3歳の時に読んだきりの童話ですがいまだにエルフの事が
忘れられません

いえ、知りません。悲しそうな雰囲気の題名ですけど‥‥
ちなみに、2歳か3歳のときの記憶なんて、ぼくはありませんよ。
すごいですね‥‥
Commented by banri at 2005-07-15 00:30 x
>ぼくは絵が書ける人を尊敬してしまうのです。

あぁ、それならずっと絵描きでいたらよかったかも。
高校3年の時に二科展で奨励賞とったのが最後です。
所謂「筆を折った」という状態でしょうか。

>『もちもちの木』はぼくにもインパクトがありました。

大好きなジサマの為に恐怖を乗り越える豆太を「ガンバレ」と
静かに応援したくなりました。
「エルフ」も機会があったら是非読んでみてください。
私がどうしても忘れる事の出来ない本のひとつなのです。

>ちなみに、2歳か3歳のときの記憶なんて、ぼくはありませんよ。
すごいですね‥‥

そうなんですか?
私の一番幼い時の記憶って1歳半か2歳の頃です。
#兄弟の数の記憶と自宅の場所で判断してます

強烈な記憶だけが残っているのでしょうねー。
Commented at 2005-07-15 09:04 x
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Commented at 2005-07-15 09:05 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by straight-tree at 2005-07-15 21:48
こんばんは。
実家にずっとあったんです、この本。
未読・・・。
余計に気になります。
絵がどくどくで小さな頃から近づきがたかったのをいまだに鮮明に覚えてます。
そのままオトナになってしまいました。
歳をとるにつれて、素直に絵本が読みたくなります。

さいきん、調子にのって写真を多用して文章を減らしてます。
夜の粟島、また時間があったら遊びにおいで下さいませ。
Commented by enzian at 2005-07-15 22:03
鍵コメ2、3さん、こんばんは。

『花さき山』ですよ~、彼岸花ですよね、この花。
あっ、そうか!その辺りにも意味がこめられているかもしれない。
気づかなかった‥‥

ふむふむ、ちょっと小さいときは悲しかったけど、
大人になって、そう言ってもらえて、ほんとうによかったですね。
ぼくが聞いてもじ~んときましたよ。

よかった、よかった。(前半部終了~)

「自利利他」的‥‥そうですね、『花さき山』はもろ、そうです。

ぼくはこの本、小学校の先生にもらったのです。それから忘れられない。
たぶん、この本がぼくのキャラクター形成に少しは影響を与えていると思います。
だから、こんないい子になったのだ~(*^^)v

これを選ばれたご両親は立派であります。
また、これをプレゼントしようとしている鍵さまもリッパであります。
男の子に『もちもちの木』ってのもナイスチョイス!
Commented by enzian at 2005-07-15 22:07
イトーさん。

>こんばんは。
実家にずっとあったんです、この本。
未読・・・。
余計に気になります。
絵がどくどくで小さな頃から近づきがたかったのをいまだに鮮明に覚えてます。
そのままオトナになってしまいました。

そうだったんですか。
機会があったら、一度、開いてみてください。
やっぱりどくどくしいかもしれないけど‥‥

>歳をとるにつれて、素直に絵本が読みたくなります。

そうですね。
ぼくはこのごろ、昔行った旅行地に無性に行きたくなっているのですが、
それも同じような感じなのでしょうか?

>さいきん、調子にのって写真を多用して文章を減らしてます。
夜の粟島、また時間があったら遊びにおいで下さいませ。

これからお邪魔しに行きまっす!
Commented at 2005-07-15 22:16
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Commented by harry_hk at 2005-07-15 22:19
小学生の頃、もしもうすぐ死んでしまうのであれば、たくさんのひがんばなをサラダにして食べながら死にたいって思っていました。
たぶん、イカレタ子どもです(笑)

花さき山も平二郎さんの絵も大好きです。
なつかしい・・・

ちなみに、上でbanriさんがおっしゃっている「かたあしダチョウのエルフ」は今では、公民館などでの講座の読み聞かせの教材などとしても使われていますよ。
Commented by enzian at 2005-07-15 22:34
鍵コメ4さん、たすかったっす。また忘れるかもしれないけど、ゆるしてね(^^;
Commented by enzian at 2005-07-15 22:38
ハリーさん

>小学生の頃、もしもうすぐ死んでしまうのであれば、たくさんのひがんばなをサラダにして食べながら死にたいって思っていました。
たぶん、イカレタ子どもです(笑)

決してイカレテはいません。
エキセントリックさんだっただけです!(^^)

>ちなみに、上でbanriさんがおっしゃっている「かたあしダチョウのエルフ」は今では、公民館などでの講座の読み聞かせの教材などとしても使われていますよ。

やべっ、banriさんのコメントを見落としてた!!
急げー
(ありがとう、ハリーさん!)
Commented by enzian at 2005-07-15 22:45
banriさん

ごめんなさい、コメントを見落としてました(平謝り)!

>あぁ、それならずっと絵描きでいたらよかったかも。
高校3年の時に二科展で奨励賞とったのが最後です。

すごいじゃないですか!
やっぱり、なんか描いてください^^

>大好きなジサマの為に恐怖を乗り越える豆太を「ガンバレ」と
静かに応援したくなりました。

すごい怖がりの豆太が、
ここぞというときにとんでもない勇気を見せるんですよね。
とてもいい話だと思います。

>「エルフ」も機会があったら是非読んでみてください。
私がどうしても忘れる事の出来ない本のひとつなのです。

さがしてみますね。

>私の一番幼い時の記憶って1歳半か2歳の頃です。
#兄弟の数の記憶と自宅の場所で判断してます

どんな記憶か、が問題ですけど、
1歳半か2歳なんて、やっぱりすごいと思います。
美的センスのある人ってちがうのかな‥‥
Commented by kourin-mama at 2005-07-15 23:26
斉藤隆介全集を持ってるくらい(といっても3冊だけなんですが)、好きです。
『八郎』とか『三コ』とか、泣かずに子どもに読んであげることはできませんね。
私、小学校の1〜2年生の頃、同じ斉藤隆介の『ひさの星』の、ひさみたいだって言われたのよく覚えてます。(だまーってる子だったみたいです。)
Commented by enzian at 2005-07-15 23:39
kourin-mamaさん

>『八郎』とか『三コ』とか、泣かずに子どもに読んであげることはできませんね。

そうですね、ある意味、困った本たちです。

>私、小学校の1〜2年生の頃、同じ斉藤隆介の『ひさの星』の、ひさみたいだって言われたのよく覚えてます。(だまーってる子だったみたいです。)

だまーってるけど、芯の強いような雰囲気があったんじゃないでしょうか?
『ひさの星』も、斉藤隆介らしいモチーフの本でしたね。
Commented at 2005-07-16 03:24 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by くき at 2005-07-16 03:29 x
あっ、ごめんなさい

もしかして原作は斉藤隆介さんだったのかな?
挿絵がいわさきちひろだったというだけで
なんか、私のなかで「花さき山」とか「もちもちの木」と
違う作品のように考えていました・・・

Commented by enzian at 2005-07-16 09:05
くきさん

そうです。原作が斉藤隆介で、絵がいわさきちひろ。

>なんか、私のなかで「花さき山」とか「もちもちの木」と
違う作品のように考えていました・・・

ぼくにもそういう印象があるんです。
滝平二郎の絵とセットになって斉藤隆介、という印象‥‥
Commented at 2005-07-18 16:07
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 毒きのこ at 2010-12-15 18:12 x
元厚生労働省局長の村木さんが
例の事件で拘置所生活を余儀なくされていた時に
支援者の差し入れ等で、150冊ほどの本を読まれていたそうです
その中で、特に心の支えになったのが
この、「花さき山」・・・だそうです
(↑日経WOMAN2011年1月号より)


本というものは、どのような時に、どんなふうに
人を、人生を支えうるのか・・・
感慨深いエピソードでした


enzianさんは今年、想い出深い本との出会いはありましたか?

わたしは、ちなみに・・・
ピアニストやピアノを嗜む方のエッセイなど、でした
Commented by enzian at 2010-12-17 21:23
毒きのこさん

そうでしたか。
ときどき心が疲れたときに読む本です。

今年の本‥
いまさらですが、
森鴎外の本とかでしょうか。
中勘助の本も読み返しました。
Commented by 毒きのこ at 2010-12-18 15:25 x
森鴎外・・・なのですね!

以前、その娘さん「森 茉莉」の【貧乏サヴァラン】
と言う、エッセイを読んだことがあります
良い意味で、わたしもそんなふうに堕ちてみたぁ~い
と、秘かに憧れましたとさ・・(^^)あはは

なぜピアノ?・・と思われたかと・・
じつは
この年になってお稽古に通いはじめた今年1年でした
今はショパン/ポロネーズ第6番・作品53
・・・をやってます
Commented by enzian at 2010-12-18 18:37
毒きのこさん

森茉莉さんのことは聞いたことはありますが、
本を読んだことはありません。

お稽古、よろしいですなぁ。

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