『ぼくは くまのままで いたかったのに……』(イエルク・シュタイナー)

b0037269_20105248.jpg『ぼくはくまのままでいたかったのに』 「枕中洞」さんの記事へのTBです。

冬が来て、森のほら穴で冬眠したクマ。クマが目覚めたのは、なぜか工場の敷地のなか、しかも、工場の人間たちは、誰もクマをクマとして認めてくれません。クマは、ひげも剃らないような薄汚い怠け者の “人間” として、工場で働かされるのでした‥‥

カフカの『変身』を思わせるようなシュール(不条理と言った方がいいかな)な絵本です。読めばやりきれない思いが残って、読んだ方がよかったのか、読まない方がよかったのかと考え込むことでしょう。そういう意味で、子ども向きではありませんし(「5歳から」となっていますが‥‥)、よほどの酔狂な方以外は大人向きでもない。だったら、なにがよいのかって?読んだ者を考え込ませるというのは、その本のもっている力でしょうから‥‥それだけではダメ?もうひとつは、人間には自然を自然として見る目がない、もっと言えば、人間があるものをあるもののままで見ていないことをうまく風刺していることでしょう。

工場で働かされる前、クマは人事課長やら副工場長やら工場長やら社長の “面接” を受けますが、誰も彼をクマとは認めず、お前は人間だ、と言います。社長にいたっては、クマを動物園やサーカスのクマのところへ連れて行って、これこそが本物のクマでお前はクマではない、と言い出す始末。一方で、工場長やら社長らの部屋には自然を写した絵画や写真のようなものが貼られており、社長の部屋には窓ガラス越しに美しい自然の大パノラマが拡がっている。彼らは自然を楽しんでいるつもりなのかもしれませんが、檻やら額縁やら窓枠といった彼らのものの見方のなかに入った自然を見ているにすぎないんですよね。

もちろん、人間にはせいぜいのところそういう限定された自然の見方しかできないのかもしれないけど、それが自然そのままではないのかもしれない、という疑問は露ほども抱いていない。檻に入ったクマや額縁に入った森の絵や美しい島の写真、窓枠越しに見える風景だけが自然の姿であると思っている。そしてそういう見方をこのクマにも強要するわけです。お前は俺から見てクマではない、ゆえにお前はクマではない、と。クマと一緒に働く労働者たちも、クマがクマであるなんて、少しも思っていない。

モリゾーとキッコロは惜しまれつつ森へ帰りましたが、人間として工場労働者となったクマは、やがてその仕事ぶりの至らなさから解雇されます。季節はもう冬。工場を出て、とぼとぼと歩き続けてたどり着いた森のほら穴を前にし、クマは考えます。「なにかだいじなことをわすれてしまったらしいな、とくまは思った。はてなんだろう?」クマが忘れた大事なこととはなんであったのでしょう?それは、しばらくのあいだ “人間” となったことで、失ってしまっていた、クマ本来の、自然の、ものの見方だったのでしょうか?読者は考えることを強いられるでしょう。

by enzian | 2005-09-25 20:14 | ※好きな絵本(コミック) | Trackback(1) | Comments(35)

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Tracked from 40゜and Yoo at 2008-06-24 20:30
タイトル : 絵本 「ぼくはくまのままでいたかったのに・・・・・・」
先程、盛岡名物福田パン(チーズ味。あんマーガリンは売り切れ。)を食べていた時、舌と唇を1回ずつガリッと噛んでしまって、ひりひりするー。しくしく。 ではでは本題。ネタバレになるかもー。 というわけで、先日てくりフェアで買った古本第2弾! これー。↓ ぼくはくまのままでいたかったのに…… イエルク・シュタイナー / / ほるぷ出版 またしても画像がないっ! 今回は自前で用意致しました。 はいっ。↓ おいちゃんの顔がこわいです。 クマが人間と間違われて強制労...... more
Commented by chinchudo at 2005-09-25 21:00
こんにちは。TBいただきまして、ありがとうございます。

この本の、enzianさんがかかれた書評を読めるとは、うれしいです!

>そういう意味で、子ども向きではありませんし(「5歳から」となって
いますが‥‥)、よほどの酔狂な方以外は大人向きでもない。

とてもniceな表現だと思います。(*'‐'*)

この本を私は大好きなのです。
というより正確には、忘れがたくて大切な本です。
ものを自然のままに見るなんてことはできそうにないですが、
せめて、見えていないのではと疑っていたいと思います。


Commented by meshi at 2005-09-25 21:26 x
これこれ! こういうのを読みたかったんです!!
見方を変えれば、精神を病んでしまった方のお話?
私、子供の頃から
「私には丸く見えているけど、他の人には四角く見えているのでは?
 実は私の“丸”は、Aさんの“四角”って言葉と同意語なので、
 問題なく生活しているのかなぁ〜」
とか想像しながら遊んでました。ワハハ
もちろん、単純な形は詳細な表現が付随したり、
触ったりするとモロバレなので、却下。
途中から抽象的なものに切り替えました。
美しいかor美しくないか・・・とか。

この本は、ぜひ読みたいです!!!
Commented by enzian at 2005-09-25 22:19
chinchudoさん

>この本を私は大好きなのです。
というより正確には、忘れがたくて大切な本です。

ぼくもこの本がおもしろいと思ったから記事にしました。
正確に言うと、こちらを試しているかのような生意気な本です(^^)
さすがドイツ人だなぁと思います。

>ものを自然のままに見るなんてことはできそうにないですが、
せめて、見えていないのではと疑っていたいと思います。

そうですね。
Commented by enzian at 2005-09-25 22:24
meshiさん

不思議!! なぜmeshiさんがこの本に反応するのでしょうか??
という謎は、次の言葉で解けました。

>私、子供の頃から
「私には丸く見えているけど、他の人には四角く見えているのでは?
 実は私の“丸”は、Aさんの“四角”って言葉と同意語なので、
 問題なく生活しているのかなぁ〜」
とか想像しながら遊んでました。ワハハ

その問いは、哲学科に入ってくる学生がもっているタイプの問いです。
すごい哲学的なセンスのある方なんですね。

>もちろん、単純な形は詳細な表現が付随したり、
触ったりするとモロバレなので、却下。
途中から抽象的なものに切り替えました。
美しいかor美しくないか・・・とか。

さらに言えば、具象的なものではダメだと思って
抽象的なものへと移行する、というのが非凡です。
スゴイですね。
Commented by 毒きのこ at 2005-09-25 22:25 x
>これこそが本物のクマでお前はクマではない、と言い出す始末。

クマさんは、戸惑ったんでしょうね。さぞかし。世間の”○○はこうあるべき、○○はこうしていて当たり前”。その範疇に収まっている時は、誰も意を唱えず、むしろ優しく見つめてくれさえするのでしょうね。でも、想定外のところに当たり前に存在させられたら世間も戸惑うでしょうし。そんな戸惑いこそ邪魔だから無視して、認めたくない思いがわき上がって来るのかな。自然は美しい、動物は可愛らしい、と賞賛しても。自分の身近に共存するとなると、奇麗事も言ってられないし、難しいのかもしれませんね。クマさんは解雇されたようですが、人間と闘争のうえ屈服させたら工場の中で共存できたのでしょうか。・・・それともこの絵本の最後のように、人間は人間の場・クマは森で、がバランスの保てる領域であるのかもしれないですね。聖域のような。・・・私は”見方”については、哀しいかなある程度キョリをとった方が楽ですね。色・・・んな差別をしてしまっていると、思いますが。
Commented by enzian at 2005-09-25 22:30
chinchudoさん、補足

この本って、なにも考えないで、なにも言わないで
知らぬうちに人々が全体の歯車になってゆくような
当時の社会への批判だったのでしょうね(現代でも同じですね)。
Commented by enzian at 2005-09-25 22:41
毒きのこさん

こんなわかりにくい記事に、よくぞコメントしてくださいました(^^)

>クマさんは、戸惑ったんでしょうね。さぞかし。世間の”○○はこうあるべき、○○はこうしていて当たり前”。

戸惑ったようですよ。

>自然は美しい、動物は可愛らしい、と賞賛しても。自分の身近に共存するとなると、奇麗事も言ってられないし、難しいのかもしれませんね。

そうですね。

>クマさんは解雇されたようですが、人間と闘争のうえ屈服させたら工場の中で共存できたのでしょうか

共存はできないと思います。
だから、クマは解雇されてよかったのだと思います。

共存、共存といっても、けっきょくはある程度距離を置かないと
人間と自然はいっしょにはやってゆけないのでしょうね。
だから、人間が自然を限定した見方しかできないということ自体が悪いというより、
“その限定に気づいていない” ということが問題なのでしょうね。
ぼくは田舎に行けば自然に溶け込めるなんて思っている人、おめでたいと思います。
田舎には、上手な自然の利用の仕方が知恵としてある、ということにすぎないのです。
Commented by chinchudo at 2005-09-26 08:01
>この本って、なにも考えないで、なにも言わないで
知らぬうちに人々が全体の歯車になってゆくような
当時の社会への批判だったのでしょうね(現代でも同じですね)。

なるほど!、です。
当時の時代背景とのかかわりは、考えたことがありませんでした。
読んでいて、逆らいがたい不条理で大きな流れを感じていたのですが、
そう考えてみるとわかりやすい気がします。
Commented by u-wakaroku at 2005-09-26 09:29
元気にあふれているときに読んでみたいと思います。
この本をつくられた人は、子どもに何を話したかったのでしょうね。

明日香にピクニックに行かれるんですね。
子どものとき、遠足といえば明日香で、
「えーっ、またぁ」とか言いながら歩かされていましたが、
大人になると自ら明日香に足をのばすようになりました。
今はコスモスの季節でしょうかね。
Commented by meshi at 2005-09-26 18:28 x
> すごい哲学的なセンスのある方なんですね。

マァ〜〜〜!!!
「動物的本能だけで生きている」って言われる多々あっても、
そのようなことを言われたことがなかったので、感動!!!
そっか〜、もっと早く気が付いていたら、
enzianさんと同業者になれたかも?(もう遅すぎだけど)
Commented by kozou_17 at 2005-09-26 18:57
ウチの方にも来て頂いてありがとうございます。
いろんな意味で面白い絵本ですね。映画「カッコーの巣の上で」を思い出しました。好きな映画なんです。ボクの思春期は、人と同じだと思ってため息をつき、人と違うと思って不安になることの繰り返しだったような気がします。自分という存在は、他人に投げかけた言葉や行動が跳ね返ってきて形作られるもので、決して自分には直接見えないもののような気がします。お前はクマじゃないと言われて、「何と言われようとクマだ」と言いきれる人はどれくらいいるのでしょうね。
Commented by enzian at 2005-09-26 21:11
chinchudoさん

>逆らいがたい不条理で大きな流れを感じていたのですが

うまい表現ですね(^^)
Commented by enzian at 2005-09-26 21:19
u-wakarokuさん

>元気にあふれているときに読んでみたいと思います。

あの~よほどお読みになるときは慎重にしていただきたく。。。(^^;

>この本をつくられた人は、子どもに何を話したかったのでしょうね。

そうですね、難しい問題です。
でも、間違いなくメッセージはあるはずです。
ぼくが考えているのは、二つです。
一つ、自然にたいする見方
二つ、全体主義に対する見方。
ドイツは森を大切にする国であり、
また第二次世界大戦の反省から立ち直った国ですので。

>明日香にピクニックに行かれるんですね。
子どものとき、遠足といえば明日香で、
‥‥大人になると自ら明日香に足をのばすようになりました。
今はコスモスの季節でしょうかね。

そうですか。。。u-wakarokuさん、奈良出身ですものね。
ぼくは限りなく奈良に近い京都に住んでいましたから、
やはり遠足で何度か奈良や飛鳥(明日香の方がいいかな。。。)へ行ってました。
でも、大人になると、たま~に行きたくなるのです。なんででしょうね。
コスモスの季節になると思います(楽しみ!)
Commented by enzian at 2005-09-26 21:23
(u-wakarokuさん、続き)

ピックアップブロガーの件ですけど、じつは、
質問の答えにぼくのブログがあったことは知りませんでした。
(ピックアップブロガーの意味も最初はわからなかった(^^;
ご推薦いただきまして、ありがとうございます。

リンクしているだけでこんなに増えるものなのか‥‥と不思議に思っていたのです。
そのために忙しくなったとかいうことはまったくないので、
お気遣いなく(^^)
Commented by enzian at 2005-09-26 21:25
meshiさん

マァ〜〜〜!!!
「動物的本能だけで生きている」って言われる多々あっても、
そのようなことを言われたことがなかったので

>そうなんですか?

>そっか〜、もっと早く気が付いていたら、
enzianさんと同業者になれたかも?(もう遅すぎだけど)

「われ、めし食う、ゆえに、われあり」とか言ってたかも(^^)
Commented by enzian at 2005-09-26 21:31
kozou_17さん

>いろんな意味で面白い絵本ですね。映画「カッコーの巣の上で」を思い出しました。好きな映画なんです。

いい映画ですね。

>ボクの思春期は、人と同じだと思ってため息をつき、人と違うと思って不安になることの繰り返しだったような気がします。自分という存在は、他人に投げかけた言葉や行動が跳ね返ってきて形作られるもので、決して自分には直接見えないもののような気がします。

それは人間の心理を鋭く言い当てた言葉だと思います。
共感できます。

>お前はクマじゃないと言われて、「何と言われようとクマだ」と言いきれる人はどれくらいいるのでしょうね。

えぇまったくその通りだと思います。
よほどの批判能力がない限り、
「そう言われたらそうかもしない」となってしまうのだと思います。
そういう風にならないように、子どものときから鍛えておこう、
というのが著者の狙いのひとつだと思います。
Commented by cubit-papa at 2005-09-26 21:57
かくある自分と、かくあるべしと言う自分は
心の中で闘ってます。私はかくあるべしが強いんですよ。
そういうことしてるとクマさんみたいな大切な何かを(かくある自分)を
忘れちゃうんですよねー。
自分らしくあることのいかに難しいか。。。
Commented by noe.saeki at 2005-09-26 22:22
ずいぶん昔、本屋で立ち読み・・・正確には立ち見しました。
原書だったので絵だけ眺めてたんです(^^ヾ
この記事で、初めて内容を知りました(爆)

森に帰っていったモリゾーとキッコロは、
きっとかつての森の仲間たちに「売国奴」くらい言われてるでしょう。
いや、黙って赦してるのかな。
結局自分達の居場所を削られてしまっただけの、
人間勝手な自己満足イベントは本当に、ホ・ン・ト・に・有意義だったのでしょうかね?
少なくとも大収益の愛知県や各業者にとっては有意義だったでしょうね。
Commented by enzian at 2005-09-26 22:55
cubit-papaさん

>自分らしくあることのいかに難しいか。。。

難しいですね、ほんと、そう思います。

>かくある自分と、かくあるべしと言う自分は
心の中で闘ってます。私はかくあるべしが強いんですよ。
そういうことしてるとクマさんみたいな大切な何かを(かくある自分)を
忘れちゃうんですよねー。

なるほど。
でも、ぼくはかくあるべしが強くて、いつも自分をいじめてしまって、
いつも困っているような人、好きですよ。
Commented by enzian at 2005-09-26 23:02
noe.saekiさん

>ずいぶん昔、本屋で立ち読み・・・正確には立ち見しました。
原書だったので絵だけ眺めてたんです(^^ヾ
この記事で、初めて内容を知りました(爆)

原書ごらんになりましたか。
ぼくは見てないんですよ。

>森に帰っていったモリゾーとキッコロは、
きっとかつての森の仲間たちに「売国奴」くらい言われてるでしょう。
いや、黙って赦してるのかな。

「売国奴」‥‥ケラケラ、さすがnoe.saekiさん!
「お前ら利用されただけなんだよ」って慰めてくれてますって。
でも、あいかわらずNHKに出てやんの(ボソッ)

>結局自分達の居場所を削られてしまっただけの、
人間勝手な自己満足イベントは本当に、ホ・ン・ト・に・有意義だったのでしょうかね?
少なくとも大収益の愛知県や各業者にとっては有意義だったでしょうね。

愛知県や各業者には有意義だったのでしょう。
終わったときの満面の笑みを見て、複雑でしたね。
大失敗すれば、もうこんな祭典、
誰もやりたいって言わずにすんだのでしょうにね。
また何年か後、日本の山や川が削り取られて、海が埋め立てられるのでしょう。
Commented by noe.saeki at 2005-09-26 23:07
せんせえ、飛鳥に行くんですか?いいなー「蘇」が食べたいっすー。
http://www.asukamilk.com/so/
Commented by enzian at 2005-09-26 23:31
noe.saekiさん

飛鳥に行きまふ、いいでしょ~

あっ、この牧場のミルクとヨーグルト、ぼく、よく食べてますよ。
近くの(唯一の)店に売っているのです。
ちょっとお値段がはるので、賞味期限ギリギリのものしか買わないけど(T_T)

ぼくも蘇食べたいので、食べよっと。
Commented at 2005-09-27 17:00
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by enzian at 2005-09-27 19:37
鍵コメさん

報告ありがとうです。
楽しそうでよかったですね。

ぼくを放置しないでください(^^♪
Commented by cubit-papa at 2005-09-27 20:49
>でも、ぼくはかくあるべしが強くて、いつも自分をいじめてしまって、
いつも困っているような人、好きですよ。
でも、この状態っていわゆる「自分がない」ってことなのかなーとも
思っています。
ぜんぜん関係ないですけど、マッコリのバラエティパックがとどきました。週末に飲もうっと。
Commented by enzian at 2005-09-27 21:53
cubit-papaさん

>でも、この状態っていわゆる「自分がない」ってことなのかなーとも
思っています。

ちょっと自分に厳しすぎるような気もしますけど。。。

>ぜんぜん関係ないですけど、マッコリのバラエティパックがとどきました。週末に飲もうっと。

マッコリのバラエティパック?
そんなのがあるんですかっ。。。 スゲッ
Commented by えほんうるふ at 2005-09-27 22:28 x
私にとっては、とても怖い絵本です。つい主人公のクマに感情移入してしまうんですが、だんだんと気が狂いそうな予感がするんです。
ある朝、目が覚めたら自分が自分として認識されなくなっていた。カフカの「変身」では主人公自身が自分の変化を認識できているのでまだマシですが、このクマのように、自分では今までの自分と変わらないと思っているのに、周りにそれを否定されてしまったら…。最初はたちの悪い冗談だと思うかも知れない。でも、自分以外の全世界に今まで信じていた自己認識の全てを否定され続けたら、しまいには狂っているのは自分の方なのかも知れないと思ってしまいそうな危うさを感じます。自分は狂っているのかも知れないという不安。ものすごい恐怖でしょうね。恐怖故に本当に発狂しかねないぐらい…。洗脳によってアイデンティティを喪失する過程とはこういうものなのかも知れません。
Commented by enzian at 2005-09-28 22:34
えほんうるふさん

>私にとっては、とても怖い絵本です。つい主人公のクマに感情移入してしまうんですが、だんだんと気が狂いそうな予感がするんです。

わかります。怖いですね。kozou_17さんもおっしゃってたように、
自己のアイデンティティというのは外との関係のなかで形成されるわけですから、
外からの承認がなければ、自己のアイデンティティを維持することはできませんね。
それこそ、内と外との齟齬のなかで、あとは発狂するしかないかもしれない。
洗脳によるアイデンティティの喪失とは、このようなものなのでしょう。
Commented by enzian at 2005-09-28 22:35
(えほんうるふさん、続きです)

蛇足ですが、もう一つの視点を。

クマはクマであることを認められず人間だと言われ、彼(?)のアイデンティティを否定されたわけですが、アイデンティティを否定されたがゆえに、“役立たずの人間”として人間の世界から解放されました。ちょっと時間の無駄をしましたが、自然のほら穴に戻ることができたわけです。

ところが、一方、クマであることを認められたクマたち(動物園やサーカスのクマ)は、
クマであることのアイデンティティを認められているがゆえに、
“役に立つクマ”として、人間の世界からいつまでも解放されない。。。

皮肉なものですね。
Commented by えほんうるふ at 2005-09-28 23:50 x
でも、ラストシーンにきてもやっぱり救われない思いがします。彼は確かに本能に突き動かされて元の場所に戻っては来たけれど、自分が何故この場所に来たのか既に分からなくなっている。一度失ってしまったアイデンティティを自力で取り戻すのは相当困難なことなんじゃないかと思うのです。そう言う意味では、自分たちの存在の拠り所を(押しつけられた役割だとしても)盲信していられる動物園やサーカスのクマの方が、まだ幸せなのかも知れません…。
Commented by enzian at 2005-09-29 07:26
えほんうるふさん

なるほど、説得力のある解釈です。御見事!
この本は授業でも使えそうな気がします。
怖さの授業です。
Commented by えほんうるふ at 2006-02-23 01:14 x
ようやく記事にしました。トラックバックさせていただきます♪
Commented by enzian at 2006-02-23 22:36
えほんうるふさん、TBありがとうです。
時間を見つけて、ゆっくり拝見に行きます。
読者の皆さんからのどんなコメントがつくか、ちょっと楽しみです。
Commented by kaori--y at 2008-06-24 20:38
こんばんは。
この本が印象に残っていて、先日古本市で見かけたときに買って読んでみました。
その感想をトラックバックさせていただきました。
実に適当でお恥ずかしいのですが。(ノ▽\)イヤン

支障がありましたらおっしゃってください。ではではご報告まで。

ところでこの記事、もう2年以上も前なんですね・・・(-_-|||)キャー・・・
Commented by enzian at 2008-06-25 00:34
かおりさん

TBありがとう。
いまはゆっくり記事を拝見する時間がないので、
また、週末にでも、見せてもらいます。

>ところでこの記事、もう2年以上も前なんですね・・

ほんと、ギャーですね。(^^ヾ

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