冬虫夏草の恐怖

16世紀の朝鮮王朝を舞台とする韓国のドラマを見ていたら、薬膳の材料として冬虫夏草(とうちゅうかそう)が出てきた。いつだかった、ヒマラヤに近いところに住む人たちが薬草として採取しているのをテレビで見たことがあったが、ずいぶん昔からアジアの広い地域で薬効のあるものとして考えられてきたらしい。

「冬虫夏草」というのはバッカクキン科冬虫夏草属の菌類、キノコの一種なのだが、昆虫やクモに寄生してそれを養分として育つ変り種で、400種類近くが確認されている。ハチタケ、アリタケ、カメムシタケ、オサムシタケといったノーマル(?)なものから、ニイニイゼミの幼虫からしか生えないセミタケ、ツクツクホウシから生えるツクツクホウシタケ、アブラゼミやエゾゼミ専門のオオセミタケなど、特定の昆虫に特化したものも多い。キノコの研究はほとんど進んでいない状態だから、冬虫夏草も実際にはもっとたくさんあるのだろうし、ひょっとすると、ほとんどの昆虫の種にそれに特化した冬虫夏草があるのかもしれない。

ある種の冬虫夏草の寄生の仕方はおもしろい。空気中を漂っていた胞子は昆虫に付着するやいなや麻痺状態にするらしいのだ。麻痺状態だから昆虫は腐敗しない。ヤンマタケなどはヤンマ(トンボの種類)が木の葉にとまったそのままの状態で生えている。アリタケなどは隊列を組んでいたアリたちの位置関係そのままに生えることがある。卵の状態の幼虫に他の昆虫を餌としてやるタイプのハチには、(卵が幼虫となって餌を食べつくすまで餌が腐敗しないよう)この手の芸当をやるのがいるけど、それは針でチクリとやるわけだから、麻酔注射よろしくわかりやすい。だが、冬虫夏草の胞子が一瞬のうちにどうやって巨大な昆虫を麻痺させるのか、はよくわからない。まったく不思議だし、昆虫にとっては世界とはなんと恐怖に満ちているのかと思う。知らぬ間に付着した微小な胞子一粒に麻痺させられ、生きながらにしてキノコにされてしまうのだ。幸い、哺乳類に寄生する冬虫夏草はまだ見つかっていない。

by enzian | 2006-03-15 22:59 | ※自然のなかで | Trackback | Comments(18)

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Commented by yasaiseikatsu10 at 2006-03-16 11:39 x
冬虫夏草、一度だけ見つけたことがあります。大学の植物園で。セミのサナギっぽいのから生えてたから、オオセミタケの一種だったりしたのかな……?動物からも栄養吸い取っちゃうなんて強いやつらですね(笑)
キノコとか小さい生き物、私も実は大好きです。何気ない森の地面が宝の山に見えちゃう。わくわくしながら腐った葉を裏返してみたり(^^)たまに図鑑に載ってないのを見つけたりすると、すごい大発見をしたかのような気分になります(笑)
Commented by coeurdefleur at 2006-03-16 12:57
きゃーん、コメントが復活してる~♪
ドングリまで~♪

昼休み終わっちゃうので夜にまた参ります~(はぁと)笑
Commented by hitorishizuka-f at 2006-03-16 17:21
私が子供の頃、恐らくほとんどの家庭に生息していたのではないかと思われる《紅茶キノコ》。あれは・・・キノコではなかったんだ、と最近テレビで聞いたことがあるような気がしますが、キノコ好きのenzianさまは食されたことはありますか?

なぜか、どの家庭の紅茶キノコちゃんも、容器は《ワンカップ○関》だったような記憶があります・・・。
どこで始まり、どこで息絶えたのか、その後の消息を知りたくなりました、今日のエントリーを見て・・・。(まだ、生息しているかもしれないですよね・・・)
Commented by enzian at 2006-03-16 18:37
おー珍しい、yasaiseikatsu10さんだ。^^

すごいですね。
冬虫夏草を見つけたことがある、って言った人は初めてです。
けっこう生えているものなのですが、
気づく人は一部のマニアだけですから‥‥(^^;

京都市内はクマゼミとアブラゼミが多いので、
オオセミタケかもしれませんね。

>キノコとか小さい生き物、私も実は大好きです。何気ない森の地面が宝の山に見えちゃう。わくわくしながら腐った葉を裏返してみたり(^^)たまに図鑑に載ってないのを見つけたりすると、すごい大発見をしたかのような気分になります(笑)

そうそう!
そういう生き物が好きだと、
どこでも宝の山になるでしょ。
どこにいてもワクワクドキドキできるんですよね。
いやぁ実によい趣味をお持ちです。(^^)
Commented by enzian at 2006-03-16 18:42
柊さん

ドングリが息苦しいと申すものですから、
新鮮な空気を吸わせてあげようと‥‥(意味不明^^)
Commented by enzian at 2006-03-16 18:52
hitorishizuka-fさん

>私が子供の頃、恐らくほとんどの家庭に生息していたのではないかと思われる《紅茶キノコ》。あれは・・・キノコではなかったんだ、と最近テレビで聞いたことがあるような気がしますが、キノコ好きのenzianさまは食されたことはありますか?

残念ですが、ないのどす。
一度、家でも作ろうとしたことがあったように記憶していますが、
失敗したように記憶しています。
生の紅茶キノコは見たことも、食べたこともないのです。
梅酒をつくるようなガラスの容器で作ろうとしたかな‥‥
Commented by enzian at 2006-03-16 18:53
hitorishizuka-fさん、続き

>どこで始まり、どこで息絶えたのか、その後の消息を知りたくなりました、今日のエントリーを見て・・・。(まだ、生息しているかもしれないですよね・・・)

食べ続けている人がいる、って話を1年以内にテレビの番組で見たことがあります。
それと、これはあやふやな情報なのですが、
ロシアの方かどこかにそのルーツがあって、
それの日本に持ち込んだ人がいたとか、いなかったとか‥‥

紅茶キノコの正体は、見たことないのでわかりませんが、
キノコではないように思います。
カビとかわけのわからん微生物のコロニーなんじゃないかなどと思いますが、
謎でございます。わかったら教えてね。(^^)
Commented by kaori_yoshihara at 2006-03-16 20:17
きのこの世界も奥が深いのですね~。
昆虫になったつもりで読むと、恐い話です。・・・きのこめ~(*`ω´*)
Commented by bucmacoto at 2006-03-16 20:50
冬虫夏草の絵。あれはこわかったです・・・・原爆被災者の体にウジ(蝿の幼虫)がわいてきて、生きたまま腐り果ててゆく描写を読んだ時も同じ恐怖でした。
そういえばスイカの種を飲み込むと、「腹の中で根付いて芽が出て茎が伸びてきて・・・最後には口からとびでて花が咲く」って言われた時も信じなかったけれど、それからは種を残らず出すようになりまし種。w
Commented by enzian at 2006-03-16 21:06
かおりさん

キノコも世界は深いよ。
なんせ、どれだけ種類があるのかさえ、わからないくらいなんだから。
でも、それがあるおかげでぼくらの生活が成り立っていることは
間違いないのでありんす。

>昆虫になったつもりで読むと、恐い話です。・・・きのこめ~(*`ω´*)

自分が昆虫だったら、
落ち着いて生活できないでしょうね、こわいよー
Commented by enzian at 2006-03-16 21:18
bucmacotoさん

>冬虫夏草の絵。あれはこわかったです・・・・原爆被災者の体にウジ(蝿の幼虫)がわいてきて、生きたまま腐り果ててゆく描写を読んだ時も同じ恐怖でした。

冬虫夏草の絵がどこかにあるのですか。
やたらリアルに書いてあるとか。
だったら、怖いですね。
ぐにょぐにょしてるし‥‥

>そういえばスイカの種を飲み込むと、「腹の中で根付いて芽が出て茎が伸びてきて・・・最後には口からとびでて花が咲く」って言われた時も信じなかったけれど、それからは種を残らず出すようになりまし種。w

スイカじゃないけど、菌類が人体で成長して子実体(つまりキノコのこと)
を出したという記録があるようです。
Commented by 座敷童 at 2006-03-17 20:17 x
私は瓶詰めの冬中夏草しか見たこと無いですねえ。
あの腐乱した姿は醜いですが、動物(セミ)と植物(正しくは菌糸類)が
納得した上ではないにしろある意味合理的に合体している様はすごいと思います。
擬態も可愛いんですが、寄生はすごいです、
冬中夏草のせみはいつからキノコになるんでしょう?

あっ、私の従兄弟は鼻腔の奥にキノコが生えました。
手術で除去するまでは何年か水泳を禁止されていましたね・・・。
麻痺して養分にはされなかったようですが、
自分の体になんかが生えるのって「プラスでお得」感が無くて
寧ろ「乗っ取られた恐怖」感があります。
鼻キノコの名称は不明です、でも医者はキノコと明言してました。
(↑このことですかね、家の従兄弟は記録に入ってるのでせうか)
おーしーえーてードクトルきのっぴ。
Commented by えほんうるふ at 2006-03-18 01:30 x
こわーい(^^;)
カビが生えたり寄生虫を体内に宿したりする人は珍しくないのだから、ヒトに生える冬虫夏草があってもおかしくないですよね…。
「そういえば何故かあの人、10年前からぜんぜん老けないねー」
なんて人は怪しいかも(怖)
Commented by enzian at 2006-03-18 09:50
座敷童さま

>私は瓶詰めの冬中夏草しか見たこと無いですねえ。
あの腐乱した姿は醜いですが、

う~ん、
ぼろぼろになってそうで、
醜そうな感じがする。

>冬中夏草のせみはいつからキノコになるんでしょう?

う~ん、
わかんないっす。(><)

>あっ、私の従兄弟は鼻腔の奥にキノコが生えました。
手術で除去するまでは何年か水泳を禁止されていましたね・・・。
麻痺して養分にはされなかったようですが、
自分の体になんかが生えるのって「プラスでお得」感が無くて
寧ろ「乗っ取られた恐怖」感があります。
鼻キノコの名称は不明です、でも医者はキノコと明言してました。
(↑このことですかね、家の従兄弟は記録に入ってるのでせうか)
おーしーえーてードクトルきのっぴ。

う~ん、
それはなにかの間違いじゃないかな‥‥
というのも、人間の体に子実体(キノコ)が出た、
って記録はほとんどない。
スエヒロタケっていうキノコが肺かどこかに生えたって
記録があるぐらいだと記憶してる。
(ぼくが詳しくないだけなのかもしれないけど‥‥)
もしそれが本当なら、記録に残りそう。
Commented by enzian at 2006-03-18 09:58
座敷童さま、続き

だったら、従兄弟さんは何であったかというと、
カビによる感染症の一種だと思うよ。
カビが鼻腔や肺、その他いろいろ(水虫とかもそうだよね)
な体の部分に繁殖してさまざまな感染症を起こすことは知られてるよね。

ところでカビとキノコとはどう違うかというと、
ほとんど似たようなもので、「類」としては同じ。
唯一の違いは、カビが子実体(キノコ)を作らないのに対し
キノコが子実体を作るってことなんだ。
言い方を変えれば、子実体を作るタイプのカビが一般に「キノコ」と呼ばれるわけ。
ちなみに、キノコってのは、胞子を上手に拡散させるための道具。

医者はたぶん、
「カビ」とは言いにくくて、
「キノコ」だと言ったのだと思うよ。
Commented by enzian at 2006-03-18 10:04
えほんうるふさん

>こわーい(^^;)

こわーいでしょー( ̄ー ̄)ニヤリ

>カビが生えたり寄生虫を体内に宿したりする人は珍しくないのだから、
ヒトに生える冬虫夏草があってもおかしくないですよね…。
「そういえば何故かあの人、10年前からぜんぜん老けないねー」
なんて人は怪しいかも(怖)

例えば、人間に寄生するタイプで、
成長までの何百年も時間のかかる冬虫夏草があったすると
そういうことになりますね。
これはホラー映画になりませんか?゛(/><)/ ヒィー
Commented by mayuzumi_kaname at 2006-03-24 00:41
こんばんは、お邪魔しております。冬虫夏草って名前が面白くて、
(むしさんにはあまりにも酷だが)そうやって生き延びるか!!っていう、
生き方も面白くて、結構好きです。
でも上のenzianさんの返信(成長に何百年かかる冬虫夏草)、
すごく面白いっす!小説になりそうですね(^_^;)
Commented by enzian at 2006-03-24 21:46
mayuzumi_kanameさん

>こんばんは、お邪魔しております。冬虫夏草って名前が面白くて、
(むしさんにはあまりにも酷だが)そうやって生き延びるか!!っていう、
生き方も面白くて、結構好きです。

冬虫夏草っておもしろい名前ですよね。
一回見たら、覚えてしまうでしょ?^^
生き方も独特です。
なかなかまねできないオリジナルなヤツなのです。

>でも上のenzianさんの返信(成長に何百年かかる冬虫夏草)、
すごく面白いっす!小説になりそうですね(^_^;)

小説になりしょうでしょ。
アイデアだけどっかに売りつけようか‥‥

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