冬の雨

いっそ雪になってくれればいいのに、冷たい雨が降っている。銀杏並木が頼りない街灯の光にぼんやり浮かび上がる。初老の女性が車椅子を押しながらやってくる。椅子にはふわふわのタオルが重ねられ、上には赤ちゃんが?――と思えば、ベビー服を着せられた人形なのであった。笑うことも泣くこともない赤ちゃんが暗い冬の空を見上げている。開いたままの口には水がたまっている。髪を振り乱し、虚ろな目であらぬ方向を見つめながらよたよたと椅子を押す女性は、たぶん、もはやこの世の人ではないのだ。赤ちゃんは彼女をこの世界に繋ぎ留める “かすがい” にはならなかったのだろうか‥‥考えることを放棄したくなるときもある。

by enzian | 2007-01-27 23:03 | ※街を歩く | Trackback | Comments(2)

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Commented by 毒きのこ at 2007-02-08 19:08 x
>考えることを放棄したくなるときもある。

誰かのことを
わかってあげる

わたしのことを
わかってもらう

わかりあう

・・・難しいですね。

世界の広さに感激することもあれば
世界の多様さにやるせない思いをいだくことも
Commented by enzian at 2007-02-08 23:15
毒きのこさん

>世界の広さに感激することもあれば
世界の多様さにやるせない思いをいだくことも

えぇ、まったくその通りですね。
感激と絶望の往復運動です。

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