『無人島に生きる十六人』(須川邦彦)

b0037269_1693395.jpg無人島が好きということもあってか、事実に基づいた漂流記が好きです。いったいこれまでどれほどたくさんの方々が漂流し、命からがら絶海の孤島にたどり着き、ぎりぎりの生活をしながら、何年、あるいは何十年の望郷の思いを胸に抱きつつ、願い叶わず死んでいったことか‥‥。失礼しました。今日はそういう話は書かないのです。

というわけで、ここでは、しゃれこうべだらけの吉村昭の『漂流』や、読むからに寒いシャクルトンの『エンデュアランス号漂流記』(全員帰還したけどね)は漂流記の名作とわかっていてもその辺にうっちゃっておいて、この本をご紹介します。楽しく読めるからです。読めば元気になること、受け合いだからです。




読んで楽しい理由は、16人全員が帰郷できたこともありますが、それだけではありません。揃いも揃ってみんなが前向きなのです。いじいじするヒマがあるぐらいなら、みなで取り決めた仕事に汗を流すような、規律正しい生活をしています。そうして、ついには、みんなで勉強会まで始めて、おかげで島を出るころには、遭難前には文字も書けなかった人たちも手紙を書けるようになっていた、というから驚きです。「この年になって、はじめて、生きがいのある一日一日を、この島で送ることができました。心が、海のようにひろく、大きく、強くなった気がします」。持ち前のものがゼロにならないよういかに守り切るか――を漂流記の本質だと思っていたのですが、限界状況の島で生き残る、とは、なにか新しい力を積極的にプラスしようとした場合に可能になることのようです。

動物好きの方には、フレンドリーなアザラシなど、いかがでしょうか。口に入るものすべてを食べ尽くすというのが漂流記の定番ですが(エンデュアランス号の乗組員たちでさえ、犬たちを食料にした)、この島ではアザラシは食料でなく、無二の親友なのですね。ひとを恐れることを知らないアザラシたちのかわいいこと、かわいいこと‥‥。グルメな方には、草ブドウ(通称)がよろしいかと。正式にはなんという植物なのかはわかりませんが(ご存知の方がおられたら、ご教示ください)、美味しそうです。なになに?友情にグルメとくれば、次はロマンスです!って?トータルパッケージの漂流記ですが、おあいにくさま。それだけはございません。なんせ、16人は全員、男だったのですから。^▽^)ケラケラ

by enzian | 2007-04-14 16:54 | ※好きな本 | Trackback(1) | Comments(18)

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Tracked from 北の夢想科学小説 at 2007-04-17 19:01
タイトル : 無理やりルビしてみる (へっぽこ)
子供のころは読めない漢字を読み飛ばすという癖がついていました。 そんな私にとってルビ(ふりがな)はとても重宝するものでした。 ルビの存在がなければ、漢字もまともに読めない大人になってしまっていたことでしょう。 ・・・ まともに書けないのは仕方がないのだと諦める事にして。。。 ^^; 少なくとも、私がPCで字をすらすら書けるのは、子供の書物にたっぷりと振られていたルビのおかげだったと言っても過言ではないくらいです。 ところが、このルビをHTMLタグで書こうとすると面倒です。 原因はごく一部...... more
Commented by bucmacoto at 2007-04-14 19:47
青空文庫版を読んでみました。
(http://www.aozora.gr.jp/cards/001120/files/42767_15618.html)
なるほど元気と感動が沸いてきました。

> 草ブドウ(通称)

これは直径5~7mmの黒に近い濃紫色の実がなる蔓のことでしょうか? 食べられるのですね。
Commented by chinchudo at 2007-04-14 23:10
上で、bucmacotoさんが「青空文庫」にあると
おっしゃったので、記事の閉じた部分を拝見
する前に、原文を初めて読みました。

いい話でした!基本は中川船長の視点なのですね。
会話(カギ括弧)の部分のリズムと、
自然や動物の描写がとても良いと思いました。

読み始めは、この読点ばかりの文体はなんだろう
とか、三十数名の墓がある島の話は伏線だなとか、
文学的な表現技法が妙に気になって読んでいたの
ですが、内容の方にだんだん引き込まれました。

生きるために日々体を動かして、余暇には研究と
お茶会というは、ある種理想ですね。生きのびて
国に帰れるかどうかという極限の場面にあって、
健康なしたたかさと智恵が輝いて見えました。
Commented by enzian at 2007-04-15 09:43
bucmacotoさん

>青空文庫版を読んでみました。

すばやすぎます。(^^ヾ
青空文庫って、こんなものまであるのですね、驚きました。
ちなみに、単行本にはかわいいイラストが書いてあって、
なかなかいいのです。

>これは直径5~7mmの黒に近い濃紫色の実がなる蔓のことでしょうか? 食べられるのですね。

そうですね。
なんという種類のものかよくわからないのですが、
すでに食べたくて仕方がなくなっているのです。><
Commented by enzian at 2007-04-15 09:50
chinchudoさん

>いい話でした!基本は中川船長の視点なのですね。
会話(カギ括弧)の部分のリズムと、
自然や動物の描写がとても良いと思いました。

chinchudoさんも、すばやすぎます。^^
そうです。船長の視点なのです。

>読み始めは、この読点ばかりの文体はなんだろう
とか、三十数名の墓がある島の話は伏線だなとか、
文学的な表現技法が妙に気になって読んでいたの
ですが、内容の方にだんだん引き込まれました。

読点は、読み進めるうちに、まったく意識しないようになったでしょ?
船長としては、あの墓に眠るような人たちのようには
部下(と言うのかな)をしたくなかった一心だったのでしょうね。

>生きるために日々体を動かして、余暇には研究と
お茶会というは、ある種理想ですね。生きのびて
国に帰れるかどうかという極限の場面にあって、
健康なしたたかさと智恵が輝いて見えました。

そうですね。
智恵という感じでしたね。
Commented at 2007-04-15 23:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2007-04-15 23:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kaori_yoshihara at 2007-04-17 14:21
船というと、J・メイスフィールドの「ニワトリ号一番のり」(福音館書店)を思い出します。この記事を読んで真っ先に思い出したのもそれでした。といっても、いつも読んだ本のことは片端から忘れていってしまうタチなので、すごくうろ覚えです^^;上記の作者名や出版社も改めて調べて分かったくらいで。

「ニワトリ号・・・」の中でも船長さんが日頃から万一の場合に備えて、あらゆることを考えているのが印象的でした。(「これがなくなったらあれをこーして、このばあいはこうする・・・」とか。)作品展を仕切らなければいけないときなど、この船長さんのことをときどき思い出すのです。

こういう本を読むといつも、「あぁこうしちゃいられないわ!」という気分になって、
せっせと洗濯物を干したり、勉強し始めたりします。^^
私も青空文庫で読んだので文字だけだったのですが、表紙のイラストも真面目でのん気な雰囲気がなんだかいい感じですね。
Commented at 2007-04-17 19:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by enzian at 2007-04-18 22:56
鍵コメ1、2さま

教えていただいてありがとうございます。
以前、同じことを言われたことがあるのですが、
なおしかたもわからず、そのままにしていました。
そのあたらいの事情にはあまり詳しくないので‥‥(^^ヾ

丁寧に書いていただいたので、
週末にでも、さわってみたいと思います。
(なおったかどうか、どうやって確認するのだろう?^^)
Commented by enzian at 2007-04-18 23:04
かおりさん

へぇ~その本は知らないです。
その本の船長さんも、あれこれ、先のことに備えているわけですね。
この本を読んで思いましたけど、
いつも気をはって疲れるでしょうけど、
船長さんってそうでないといけないのでしょうね。

>作品展を仕切らなければいけないときなど、この船長さんのことをときどき思い出すのです。

なるほど。
かおりさんの作品展では、かおりさんが船長なわけですね。

>私も青空文庫で読んだので文字だけだったのですが、表紙のイラストも真面目でのん気な雰囲気がなんだかいい感じですね。

とても味のあるイラストで、
いいですよ。^^
Commented by enzian at 2007-04-18 23:05
鍵コメ3さん

ありがとうございます。(^^♪
Commented by harry_hk at 2007-04-20 12:00
でも、ロマンスがないとも限らないような。。。
という展開もなんだか。
Commented by enzian at 2007-04-20 23:37
ハリーさん

さすが、そういうコメントはハリーさんしかできません(爆)。
ぼくもそんな展開、考えないでもなかったけどね(チュドーン!)
やっぱりR指定か‥‥無念
Commented by enzian at 2007-04-21 23:47
鍵コメ1、2さん

アドバイスの通りトライしてみたのですが、
コメント欄がうまく表示されませんでした‥‥(>_<。)
また、折りをみて、試行錯誤してみようと思っています。
Commented at 2007-04-23 22:08
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Commented by enzian at 2007-04-25 00:35
鍵コメ4さん

いえいえ。こちらがお礼を言うべきです。
ど~も~^^
Commented at 2007-04-29 00:04
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Commented by enzian at 2007-04-29 23:50
鍵コメ5さん

すごい、すごい、年に二回も。
しかも、難易度、極めて高し!

やっちゃれ、やっちゃれ!
ふれーふれー^^

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