君の名は

雑誌『AERA』のコラム「今という時間(とき)」に掲載されたエッセイです。この後も、あまり反省していないようで、名前を間違えます。

いつも元気な学生が今日に限って姿を見せない。すぐに先週の失敗が頭をよぎる。やっぱり、やってしまっていたか‥‥。

教師には、してはいけないミスがある。学生の名前を忘れることはその一つだろう。毎週、何百人を相手にするから、顔も名前もわからないのがいるのは仕方ない。よくないのは、一度覚えた名前を他の名前と取り違えることだ。それが仲のよい者同士だと、もう目もあてられない。学生のけげんな顔でミスは発覚する。はっとしても時すでに遅し。教室の一角から流れ始める重苦しい空気。少しも理解されていなかったという失望感を浮かべた表情。その後、授業は空回りする。

もちろん顔と名前が一致するよう努力してもいる。いま一番気に入っているのは、用意したカードに好みのプリクラを貼ってもらうことだ。これだと、友人とのツーショットや親しいグループの集合写真を選んでくるから、意外な人間関係が見えておもしろい。それぞれの写り方にも個性がでていて、何かと参考になる。だが、ここにも落とし穴がある。一緒に写った友人をうっかり本人と間違えることがあるからだ。

風の噂では、粗忽(そこつ)な教師に別れを告げるメールが友人に送られたという。とほほな私はプリクラに“矢印”を書き込む。関係の修復を急がねばならない。

by enzian | 2004-10-24 09:57 | ※どこぞに載せたもの | Trackback | Comments(0)

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