やわらかな空間

床屋で髪を切っていた。ひまだったので、隣に座っているおばちゃんと床屋の兄ちゃんとの会話を聞いていた。兄ちゃんが言うには、おばちゃんの小学生の息子もそこで髪を切ってもらっているのだけど、来ると必ず「なぁなぁ、話、聞いてぇな」と言って、ため口で話し出すそうなのである。聞き上手の兄ちゃんは、いつもじっと聞いてやっているらしい。おばちゃんは言う。「なかなか話を聞いてもらう機会がないから、聞いてやってください」。



小学生は学校が終わってからも夜遅くまで塾があって、忙しいらしい。家庭→学校→塾‥‥∞というルーティーン(決まった手順)のなかで、ゆっくり話したり、それを聞いてもらったりする機会がないというのは、つくづくよろしくないことだと思った、と同時に、聞き耳を立てた学校関係者は自分の仕事を棚に上げて、やるな兄ちゃん、ええぞ、ええぞ、と感心したものだ。

こういうとき、地域の寺院を子どもの居場所として利用できないものか、といつも思う。いまどき、学校も塾も親も友だちも、やるべきことに追いかけられて、余裕なんてないだろう。だったら、子どもがなにをしないでも責められないような、しかも行けばいつも誰かがいるようなやわらかな空間を別に作ればいい、大変だろうけど。死者を送るだけが寺の仕事ではないのだから。ただしその際、一つ守らねばならないことがある。いわゆる“お説教”は無用なのである。

by enzian | 2008-04-05 22:10 | ※その他 | Trackback | Comments(0)

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