2006年 02月 27日 ( 1 )

哲学エッセイの白眉

b0037269_21191546.jpg煮詰ってまいりました。ちょっとフレッシュな記事が書けそうにないので、今日は、何ヶ月にもわたって、ここで紹介すべきかすべきでないか迷い続けてきた一冊を、勢いにまかせてえいやっ!と紹介します(どうせヤダと言われるので、著者の了解は得ておりません)。

池上哲司『不可思議な日常』です。著者はぼくの同僚。この微妙な関係が紹介を思いとどまってきたいちばんの理由です。自分びいきは得意技ですが、身内びいきは苦手なのです。ジャンルは哲学エッセイ。仏教系雑誌の同名コラムに連載されていたエッセイ80篇が収録されています。仏教系雑誌の記事であったことが躊躇した二つ目の理由です。著者もぼくも特定の宗教への個人的な関係をもち合わせていませんが、紹介することでそのような誤解や予想外の影響が生じることを恐れました。文章については、著者は自分の母親にもわかるように書いたと言っていますが、読み通しておもしろいと感じるには、かなりの忍耐力が必要でしょう。紹介しても、どれだけの方が読むことができるのか‥‥。楽しく読み通せない本など、どれほど深遠であろうと、たんなる紙の束にすぎない。それが、ぼくを迷わせた三つ目の理由です。

それでも今回、紹介しようと決心したのは、この本が哲学エッセイとして素直にスゴイと思うからです。ぼくのエッセイなど比較の対象にもならない。構成は 「遠い記憶」「こころの不思議」「生命へのおそれ」「不意の電話」「過ぎ去った時間」「渦巻き猫の死」の6章からなります。お世辞にも明るいとは言えず、むしろしんみりさせるタイプの本ですが、もし読み通せれば、著者の、家族や動物への愛情に満ちたやさしい眼差し、そして、さりげない言葉のなかに秘められた含蓄の深さに、たちまちにしてファンになる人も多いことでしょう。すでにアマゾンでは品切れ表示が出ていますが、興味のある方はここをごらんください。在庫があるようです。

by enzian | 2006-02-27 21:28 | ※好きな本 | Trackback | Comments(16)