カテゴリ:※山河追想( 46 )
※山河追想

人差し指は覚えている

右手の人差し指にはふたつの傷あとがある。ひとつは釣り上げたタチウオに噛まれたあと。大阪湾の夜の防波堤でのできごと。噛まれたあとも根性で釣り続けた。もうひとつは、ずっと記憶をさかのぼる。小学校に入...

2011年 11月 01日

※山河追想

「じゃ、行こうか」

Kは5年生のときに引っ越してきた。Kとは不思議と馬が合った。いつもいっしょに居るわけではなくても、なにかあるとKはぼくのところにとつぜんやって来る。 とある山奥に野生の蘭が生えているらしい...

2011年 07月 20日

※山河追想

じゅうやく

街のなかといっても、どこにも土がないというわけじゃない。街路樹は植わっているし、ビルとビルのあいだにはいくばくかの土があったりする。そこには不思議とドクダミがたくさん生えていて、これほどいたると...

2011年 06月 09日

※山河追想

葦ちまき

近所の和菓子屋で、ちまきを買ってきた。「田舎ちまき」と書いてある。笹で包んだ三角形のもので、餅にはご飯の粒が残っている。新しい味だ。 ぼくの郷里では葦の葉を使っていた。葦は水辺に生える植物...

2011年 05月 05日

※山河追想

無縁仏

「保険料が三分の一になるご提案です」。「私には関係がないようなので、けっこうです」。 そう断って、「関係がない」という言い方でよかったのかわからなくなった。保険の契約をするつもりはないにし...

2011年 02月 11日

※山河追想

墓地の入り口には六地蔵さんが並んでいて、祖母は手前から順番に「なむあみだぶ、なむあみだぶ」と唱えながら、線香を供えていった。 墓地に入ってすぐ、石でつくられた台が置いてあって、側面には蓮の...

2011年 02月 06日

※山河追想

おんごろ

子どものころ、悪いことをしたときに、「そんなことをすると○○が来るよ」という風なことを言っておどかされたことはなかったでしょうか。 ぼくの母は、ぼくが悪いことをすると、ときどき、「おんごろ...

2010年 12月 29日

※山河追想

白い子猫

ちびっこ広場と呼ばれる広場があった。東側にはブランコなどの遊具が置いてあり、西側にはなにもない土地ががらんと広がっていた。学校が終わると、ぼくらはそこで毎日暗くなるまで野球をしていた。ある日、野...

2010年 10月 17日

※山河追想

綿菓子

窓を開けるとキンモクセイの香りがした。もうそんな季節になったかとため息が出るが、ともかく、これから一週間ほどはこの香りに包まれて暮らすことができる。強(したた)かな雨が花びらを散らしませんように...

2010年 10月 03日

※山河追想

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2010年 03月 20日