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残る10センチ

どこでもそうであろうが、大学構内の公的なエリアのほとんどは、喫煙エリアを除いて、禁煙となっている。ある朝、喫煙エリアに置かれた灰皿の傍らに立っている学生がいた。灰皿との間隔は20センチ。右手には携帯、盛んにメールを打っている。左手にはタバコ、器用に指ではじきながら、灰をしっかりと地面に落としている。灰皿とタバコとの距離は10センチ。立ち姿、一挙手一投足から、自分が見られていることを意識していることが見て取れる。

ルールにしたがわない、モラルをものともしないというこれみよがしのポーズを見せることによって自分のアイデンティティを主張する、ありがちなタイプのバカだと切って捨てるのはたやすい。実際、自分もそう思う。だが一方で、吸わぬ者の気持ちを無視して所かまわず歩きタバコを吸い、煙を充満させるおびただしい数の “鈍感” の群れなかで、わざわざ喫煙エリアまで足を運び、灰皿まであと10センチに近づいたことを悪意にのみとるのも、どこかしっくりこない。悪意の解釈になけなしの知恵を巡らせる暇があるぐらいなら、残る10センチの距離をいかに詰めさせるかの策略を練るのが、自分の仕事なのだろう。

by enzian | 2006-10-29 12:05 | ※キャンパスで | Trackback(1) | Comments(4)

影のある言葉

「○○(ぼくの研究対象)ってこんなに簡単だとは思わなかった」と研究発表を批評された。薄々気づいていた現実を目の当たりにしたような気がして、がっかりした。

研究発表だから、発表の趣旨が伝わらないようなら論外だが、論旨がはっきりしていて、それでいて、なにかしら簡単には割り切れないようなものが背後に幾重にも重なっていることにも気づかせ、聞いた者が自分でそれを考え明らかにしてみたいと感じさせるようなもの、発表とはそういうものでなければならない、とずいぶんおこがましい思い込みをもっている。

易しくても、影のある言葉というものがあると思う。そういう言葉を話したいと願ってきたし、書きたいとも切に願ってきたが、無いものねだりの願いは叶えられそうにない。叶いそうにはないが、ブログの記事はまた書きはじめることにしよう。

by enzian | 2006-10-21 20:31 | ※キャンパスで | Trackback | Comments(2)