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冬の雨

いっそ雪になってくれればいいのに、冷たい雨が降っている。銀杏並木が頼りない街灯の光にぼんやり浮かび上がる。初老の女性が車椅子を押しながらやってくる。椅子にはふわふわのタオルが重ねられ、上には赤ちゃんが?――と思えば、ベビー服を着せられた人形なのであった。笑うことも泣くこともない赤ちゃんが暗い冬の空を見上げている。開いたままの口には水がたまっている。髪を振り乱し、虚ろな目であらぬ方向を見つめながらよたよたと椅子を押す女性は、たぶん、もはやこの世の人ではないのだ。赤ちゃんは彼女をこの世界に繋ぎ留める “かすがい” にはならなかったのだろうか‥‥考えることを放棄したくなるときもある。

by enzian | 2007-01-27 23:03 | ※街を歩く | Trackback | Comments(2)

きっと会えるはず

久しぶりに大学時代の友人たちと会った。昔話に花が咲く。会えばいつも話題になるのは、知り合って最初の旅のことだ。そう遠くもない伊勢志摩辺りの貧乏旅だったのだけど、いまから思い出しても、楽しくてしかたがない。あのとき以来、ぼくにとっては伊勢志摩は特別な場所になったし、たぶん、友人たちにとってもそうなのだろう。やっぱり若いころには無茶なことをしておくもんだなぁなどと、わかったようなわからないようなことを言っている。筋金入りの下戸だけど、このときばかりはビールがうまい。ふわふわと楽しく酔っている。真っ赤になっているのはわかっているけど、今日は学生の視線や動向に目を配る必要もないのだ、かまやしない。すっかりいつもの “先生言葉” を忘れて、関西弁フルパワーでしゃべりまくっている。いつもいっしょにいるわけでなくても、そうそう会えるわけでなくても、心から会いたいと願えばきっと会えるはずだ――そういう人がこの世界にいることが、どこかでぼくを支えている。

by enzian | 2007-01-21 11:38 | ※その他 | Trackback | Comments(34)

感覚器官

封筒を開けば、“Die Sinnesorgane”(感覚器官) と題されたドイツ語文献のコピーが出てきた。ネコのイラストが載っている。その瞬間、雷に打たれたように、数年前の授業の記憶が蘇った。覚えていたのだな‥‥コピーにはこうある。

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by enzian | 2007-01-19 23:16 | ※彼方への私信 | Trackback | Comments(0)

「おもちゃのチャチャチャ」

「おもちゃのチャチャチャ」(作詞:野坂昭如、補作詞:吉岡治、作曲:越部信義)が好きです。

1.空にキラキラ お星さま
  みんなすやすや ねむるころ
  おもちゃは箱を とびだして
  踊るおもちゃの チャチャチャ

曲もいいけど、歌詞が好き。「空にキラキラ お星さま」(ここは吉岡治が補作した部分)は曇った気分をフッと吹き消してくれます。「みんなすやすや ねむるころ」では、暖かいお布団にくるまって眠る子どもたちの寝顔が目に浮かぶかのよう、さすが野坂昭如だなぁ。なんの心配もなくお布団にくるまってすやすや眠る‥‥幸せですね(関連記事^^)。至福の静けさを見計らって、おもちゃは勢いよく箱から飛び出してくる。おもちゃのうきうきした感じが伝わってきます。子どもたちは昼に生き、おもちゃたちは夜に生きる。それぞれの生活があるのでしょう。「上を向いて歩こう」もいいけど、「見上げてごらん夜の星を」もいい。

3.きょうはおもちゃの お祭りだ
  みんな楽しく うたいましょ
  子羊メエメエ 子猫はニャー
  こぶたブースカ チャチャチャ

毎夜、おもちゃたちはお祭りさわぎ。昼はおとなしくしていた子羊や子猫も、このときばかりは元気いっぱい。そっか、だから昼間はお母さんのそばで眠ってばかりいたのか‥‥。子どもが寝静まったあとのおもちゃの世界を見ているのは、誰なのでしょうね。^^

4.空にさよなら お星さま
  窓にお日さま こんにちは
  おもちゃはかえる おもちゃばこ
  そしてねむるよ チャチャチャ

  おもちゃの チャチャチャ
  おもちゃの チャチャチャ
  チャチャチャ
  おもちゃの チャチャチャ

そろそろお休みなさい――踊り疲れたおもちゃたちにお日さまが声をかけます。そう、もう子どもたちが目覚める時間なのです。

by enzian | 2007-01-08 11:44 | ※その他 | Trackback | Comments(26)

大井川鐡道でSLに乗る、の巻

SLに乗ってみたいと思っていた。一度も乗ったことのないものだから、おじさんのノスタルジー(郷愁)とはちょっと違う。何世代か前のレトロな感じを味わいたかったのかもしれない。そんなわけで、ひそかに大井川鐡道(静岡県)に行ってきたのだ。

かなり重いですが‥‥

by enzian | 2007-01-06 18:06 | ※リュック背負って | Trackback | Comments(20)

「知らぬが仏遊び」

いろいろと悪いことはしてきたが、さしものぼくでも、こればかりはひどかった、やめておけばよかったなぁと思えるイタズラがある。その名も、「知らぬが仏遊び」。“遊び方” は簡単で、ある日あるとき、ターゲットとなる友人の話をひとしきり聞いたあとに、小声で、ちょっと視線を外したりしながら、「知らぬが仏よのう」とぽつりと言うだけのことなのだ。引っ掛ける側がペアになって、「知らぬが仏よのう」のあとに、互いに半笑いでうなずき合ったりすれば、なお効果は劇的に高まる。もちろん、実際にはターゲットに不都合なことはないわけだけど、ターゲットによってはひどく狼狽するから、その様子を見て喜ぶ、というわけなのだ。陰湿な遊びだった。

by enzian | 2007-01-02 17:41 | ※その他 | Trackback | Comments(12)

勇気

雨降るキャンパスを傘をもたずに駆け抜けようとしたら、声を掛けられた。「入っていってください」。驚いたが、甘えることにした。「授業もないのに、こんな朝っぱらからどうしたんですか?」「学生が卒論の相談に来るんです」。彼はゼミを担当していないから、卒論指導の義務はない。学生から慕われているとは聞いていたけど、ほんとなんだな‥‥。なんの衒(てら)いもなく朴訥と話す彼の横顔を見ながら歩いていたら、何年か前に一度、同じように傘に入れてくれた女子学生がいたことを思い出した。たった1分ほどのことなのに、ぼくは余計なことをあれこれ考えて、すっかり照れてしまったのだった。別にその学生が好きとかそういうことでもなかったのに。そういえば、彼女も彼と同じように、まっすぐ前だけを見る目をしていた。

今年も、ささやかにやってゆこうと思います。
よろしくお願いいたします。

by enzian | 2007-01-01 23:10 | ※キャンパスで | Trackback | Comments(14)