<   2011年 10月 ( 10 )   > この月の画像一覧

すっきりとぎっくり

坐ろうとしたときにグキリときた。こんな言葉、使いたくもないが、ぎっくり腰なのである。せんじつ、とある大学の方が、いかにもぎっくり腰でさくさくとは歩けませんという風な身のこなしでエレベーターに入ってきたときに思わず笑ってしまい、詫びをいれたばかり。こんな失礼なことをしてしまったら、いずれバチが当たって、自分もなってしまうのではないかと、ひやひやしていたらこれなのである。パソコンの前から一歩も動けやしない。

こういう場合、バチが当たったわけではなく、バチが当たっては困ると意識しているものだから、失礼→ぎっくり腰という天罰、という因果関係を創作してしまうというふうに考えられるのだろうが、自罰と考えるのもおもしろい。失礼な自分を許しておくぐらいなら、自分もぎっくり腰になった方がまだ気持ちとしてはすっきりする。ならば、不自然な坐り方をしてぎっくりしてしまえ、というわけだ。天とは自分なのである。

by enzian | 2011-10-29 21:24 | ※その他 | Comments(0)

思い切る

「思い切る」という言葉はずっと「決心する」の意味だけだと思っていたが、「断念する」「あきらめる」の意味を含んでいると知ったのはいつのことだったか。『星の王子さま』を読んだときだったかもしれない。「こころ切る」とか「精神切る」という表現はなくて、「思い切る」という表現があるのは、「思い」には、なんとなく粘着質で、枝垂れ柳のようにどこまでも長く伸びて、なかなか区切りがつかない働きのニュアンスがあるからなのだろう。

こちらに戻ってきて一ヶ月が経とうとしているが、研究どころか、昨年度の積み残しの仕事にさえ着手できていない。これでは総倒れの憂き目を見てしまうので、来週からは、自分の責任のなかにあってどうしても必要なこととそうでないこと、言いかえれば、〈内と外〉を区別して、外は思い切ることにする。〈外〉のものごとよ、非情と言うなかれ。

by enzian | 2011-10-27 23:18 | ※キャンパスで | Comments(2)

見なかったことにして

バスを降りると盛んに雨が降っている。いらっとしながら折りたたみの傘を開けようとすると、暗いバス停に若い女性がひとり立っていた。傘をもっていないらしい。バス停からさほど遠くないところに住んでいる女性とわかる。顔を見たことがある。傘に入れてあげようかと思うが、すぐに打ち消す。相手が少年や男性であれば声をかけられただろうが、しょせん、相手は決して声をかけることはできない存在なのだ。かければ相手にも迷惑だろうし、こちらにもどんな災いがふりかかるかしれない。そんな小さなこともできないとは。なにも見なかったことにして、ひとり傘をさして家路に急ぐ。男と女、つまらぬものだ。

by enzian | 2011-10-24 21:35 | ※その他 | Comments(0)

エチケット

つねひごろ、どうしてひとはあいも変わらないのかと不満ばかりもっているが、たった半年で、すっかり別のものになったり、きれいにもとに戻っていたりするのを目の当たりにすると、なんとまぁひととはフレキシブルなものかと、ころっと考えを変えたくなる。もちろん、こちらとしても、この種についてはこのような環境においてあのような変化をとげるだろう、あの種についてはあのような環境であるからこのように変化するであろうといった “変化の想定” をしているわけで、そういう意味では、想定の範囲内からでるものはなかった。

変わらないこともあった。ぼくの相変わらずの怖がられっぷりである。「怖い、怖い」とうるさくてかなわないのである。怖いなら近づかねばよかろうに、耳元での大合唱なのである。まぁ世の中にはお化け屋敷とかモンスターハウスに近づこうとする少数の物好きがいるのだから、こういうことになるのかもしれない。もちろん、自分のことを弁えているぼくは、自分を怖がっているとわかったひとにはもうそれっきり一切近づかない。そんな、怖くて泣いている子どもをさらに怖がらせるようなまね、やなこった。せめて三分の一人前の社会人として、いたずらに近づかないでいてあげることがエチケットだと思っている。

by enzian | 2011-10-19 22:09 | ※その他 | Comments(0)

清涼飲料水

b0037269_20365412.jpg
あんなにうとましかった夏の暑さが、もう懐かしい。

by enzian | 2011-10-15 20:38 | ※写真 | Comments(0)

ぴりぴり、ひりひり

とある四川料理店にいったときのはなし。その店の麻婆豆腐は唐辛子や花椒がしっかり使ってあり、かなり本格的に辛く(辣)て、痺れるような味(痲)付けで、この手の料理を食べ慣れているぼくからしても限界の香辛料の効き具合だと思ったのだが、店主によれば「若い方はこれでは足りないとおっしゃる方が多い」ということであった。

こういう料理には汗を出すこと、汗を出したあとの爽快感を楽しむという意味があるのだと思うが、汗を出すために必要な一定量を超えてぴりぴりやひりひり自体を求めているのだとしたら、それは一瞬であっても、生命を維持するための食事に自分への圧迫感とか抵抗感をくわえていることだろうから、(同じことは炭酸飲料水でいったことがあるけど)興味深いことだ。これが自虐の意味ではないかなどという邪推は、怖いのでしないでおく。

by enzian | 2011-10-13 22:26 | ※その他 | Comments(0)

ぴょん吉、その後

なんにんかのひとにぴょん吉のその後を聞かれたので、書く。こんな話、読んでいるひとがいるとは思わなんだ。引越の日、部屋のものをすべて出してしまうというので、心配していたのは知らぬうちに彼を踏みつぶしてしまわないか、ということだった。朝、段ボール箱をガムテープで閉じていたら、うまくぴょん吉が飛び出してきた。このときばかりはなんとしても捕まえねばならぬと、大捕物をして、見事、御用にした。

どこに逃がそうと迷ったが、けっきょく、ベランダに置くことにした。ベランダはお隣さんたちとつながっているから、人間の部屋が好きなぴょん吉はどこか彼の好きなところにいくだろう。その部屋主とぴょん吉の相性がどうなるのか、スリッパでパンパン叩かれたりしないだろうかなどと心配になるが、考えてどうにかできるものでもない。「お元気で」と、いつも人間との別れのときにもいう言葉とともに、ベランダに置いたのであった。

半年ぶりに京都の山奥の家に戻ったら、カネタタキが侵入していた。夜ごとカンカンと風流なことである。ぼくはぴょん吉のことは忘れて、このカネタタキをあたらしい友だちにすることにした。お前の友だちは節足動物ばかりなのか。

by enzian | 2011-10-09 22:39 | ※その他 | Comments(0)

慧眼の士

b0037269_23343271.jpg半年間のブランクを埋めることに追われる。資料を整理していたら、校医の先生が退任なさっていたことに気づいた。思わず「しまった」とつぶやく。

その名前は学生時代からあったし、たしかに今年まであった。その名前があることが安心でもあった。慧眼の士。昨年見かけて、足下がおぼつかない風であったので覚悟していたとはいえ、なにかがはらりと落ちたように感じた。私的な関係にあったわけではないとしても、ひとこと、伝えたかった。これまでぼくはいつも最後の瞬間を逸してきている。気づけば、いつもすでに事は終わり、ぽつんと取り残されているのだった。別れはいつか来るものとはいえ、できることなら、お世話になったことのお礼の気持ちを示して別れたい。

by enzian | 2011-10-07 23:36 | ※キャンパスで | Comments(0)

いつも前から歩いてくるひと

ときどき向こうから歩いてくるひとがいる。誰だか知らない。脇目もふらず、まっすぐ前を向いてどうどうと、ゆったりと歩いている。こちらに興味を示す様子はない。決まって手ぶらだが、ときどき小さなウェストポーチらしきものをつけていることもある。毛むくじゃら系だが、それなりに荒っぽくまとまっている。背丈は大きくない。彼に最初出会ったのは、ぼくが19歳のときで、大学の構内でのことだった。ぼくは一目でその顔を覚えた。なるほど大学とはこのような人間が闊歩するところなのだ、と思った。あのときから彼の風貌はまったく変わらないままで、ときどき忘れかけたころに前から歩いてくる。いつも前から歩いてきてすれ違うばかりで、後ろから来て抜かれたことは一度もない。

by enzian | 2011-10-07 22:47 | ※キャンパスで | Comments(0)

後ろ向きのまなざし

あたりまえだけど、学生もいろいろ。教師と学生の関係はいわゆる「師弟関係」だけだと考えているかたもおられるかもしれないが、ひととひととの関係だからそんな単純ではない。学生のなかには、「自分の方が能力のある人間であること、より高級な生まれの人間であること」をぼくに知らしめるために、ぼくのゼミを選ぶようなものもいる。権威主義的な傾向のひじょうに強いひとだと思うが、それじたいは悪いことじゃない。

こっちとしては学生が自分よりも優秀だったらうれしいし、さっさと抜き去って、いろんな方面で活躍してもらえたらと切に願っている。そしてもしできることなら、自分が抜き去ったひとたち、後に残されたひとたちがそれをどんな風に感じているかを考えられるような、“後ろ向きのまなざし” もわずかにもち続けているなら、なお魅力的だし、自分(学生自身)を知ることにもなる、と思っているのだが、これはぼくの趣味の問題なんだろな。

by enzian | 2011-10-02 10:02 | ※キャンパスで | Comments(0)