菅浦(7)

b0037269_14131956.jpg佐吉を出て、湖畔のベンチに座ることにした。老人が舟を操って、ちょっと深いところで網を入れている。なにが獲れるのだろうか。鮒や鯉だろうか。

ちょうど羽虫(はむし)が羽化する時期のようで、浅場のいたるところで鮎が跳ね、それまで蒼い鏡面のようだった湖面には、にわかに銀色のざわめきが立っている。最終バスの時間が近づいて、どこからかコロッケを揚げる匂いが漂ってきた。昼間いたブラックバスの釣り人たちはもういない。

この石のベンチに座って星を見上げられればよいだろう。視線のまっすぐ先には対岸があって、大津にまで連なっているはずなのだが、それはあまりにも遠く霞みの彼方に横たわっている。菅浦に来てやっと埋まったと安堵した想いのかけらだったが、けっきょく新しいかけらをまた生み出したのだった。次は空気の澄んだ冬に来よう。瞬く星空が美しいにちがいない。

駅舎のツバメの巣には両親が戻ってきていて、6羽がぎゅうぎゅう詰めの団子になって眠っている。永原からしばらく、湖西線の車両はがらがらの貸し切り状態だった。 (了)
by enzian | 2010-07-19 14:14 | ※海を見に行く | Comments(0)

身の周り半径5メートルほどにある、なにげない日常をささやかに見つめ直します。


by enzian
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