紐帯

b0037269_16174957.jpg新幹線のホームでは多くのひとが電車を待っていた。なかにひとり、どうしても違和感をぬぐえないひとがいた。

正確にいえば、それは「ひと」というより、もっとべつの生きもののように思えた。彼は終始うすら笑っていた。ときおり周囲に目をやっているが、彼が見ているのはこの世界ではなく、スクリーンに映された影像なのではないか。彼の世界とスクリーンに映された世界はべつの世界で、スクリーン上の人間と彼が交わることはない。混じりあうはずのないものを意味もなくえんえんと見せられ続けている――そういう齟齬(そご)の感覚が彼のうすら笑いになっているのではないか、ぼくにはなぜかそんなふうに思えてならなかった。

電車がホームに入ることを告げるアナウンスが響く。まもなく電車が着いて、車両に乗り込もうとする姿を見てはっとした。彼と、彼の後ろから乗り込もうとする男性の手首は、太い綱で結びつけてあった。
by enzian | 2011-11-19 15:52 | ※その他 | Comments(0)

身の周り半径5メートルほどにある、なにげない日常をささやかに見つめ直します。


by enzian
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